【令和8年6月1日施行】電気工事業者様、銅線スクラップ売却時の本人確認が厳格化されます

【令和8年6月1日施行】電気工事業者様、銅線スクラップ売却時の本人確認が厳格化されます

銅線スクラップ売却のルール激変

電気工事の現場から出る手元電線や、使い古した銅線スクラップ。これまでは「現場の帰りに近くのスクラップヤードに寄って、その場でパッと現金化する」というのが、多くの電気工事業者様にとって日常の一コマだったのではないでしょうか。現場をきれいに片付けつつ、ちょっとした雑収入にもなるので、ありがたい存在です。

ところが、そんなお馴染みの取引ルールが、令和8年(2026年)6月1日からガラリと変わるのをご存じでしょうか。新しくスタートする「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」(通称:金属盗対策法)によって、銅線スクラップを売却する際の本人確認や記録保存の運用が見直されます。

「また面倒な事務手続きが増えるのか」と、うんざりしてしまう気持ちは本当によく分かります。日々の現場だけでも忙しいのに、売却の手間まで増えるとなると、ため息が…。しかし今回の法改正、真面目に工事を行っている皆さまの身を守るためには、絶対に無視できないとても重要な変化です。

本人確認が「厳格化」される背景

なぜ今、これほどまでに銅線の売却ルールが厳しくなっているのでしょうか。「自分たちは何も悪いことをしていないのに、なんで巻き込まれるんだろう」と思うんですが、それには社会問題化している深刻な理由があるのです。

金属盗難事件の急増

ここ数年、ニュースでも頻繁に「太陽光発電所から銅線ケーブルが盗まれた」という事件を目にしませんか。実は、令和6年の金属盗の認知件数は20,701件に達しており、これは令和2年と比べるとなんと約4倍という異常なペースで増えています

さらに驚くべきは、その被害額です。令和6年における金属盗の被害総額は約140億円にものぼり、これは日本全国で起きている窃盗犯全体の被害額の約2割を占めるほどの規模になっています。被害に遭った太陽光発電施設などでは、長期間にわたって発電が止まってしまうなど、甚大な経済的損失も発生している状態です

盗品流通を防ぐ網の目

警察庁などの調査によると、盗まれた金属製物品のうち、なんと半数以上の55.5%が「金属ケーブル」であり、材質別で見ても「銅」が54.1%と過半数を占めています。被害額ベースにいたっては、銅の被害が全体の約7割(約97億5,300万円)を占めているという、まさに狙われやすい状況なワケです

こうした盗まれた銅線が、一部の不適正なスクラップ業者に持ち込まれて簡単に現金化されてしまうことが、窃盗団をはびこらせる原因になっていました。そこで国は、「盗品が混ざりやすい銅の流通ルートを根本から引き締めよう」ということで、今回の新しい法律を作って網の目を張り巡らせることにしたのです

電気工事業者が直面する「3つの変更点」

今回の法改正の主役である「特定金属くず」とは、2026年現在、まさに皆さまが扱う「銅」が指定されています(重量や価額の50%以上が銅であるものが対象です)。では、令和8年6月1日以降、実際にスクラップヤードへ持ち込んだ際に具体的に何が変わるのか、実務上の変更点を3つに絞ってみていきましょう

現場での顔写真付き身分証の提示

これまでは、スクラップの買い取り時に健康保険証などを提示したり、あるいは顔見知りだからとノーチェックで取引できたりしたケースもあったかもしれません。しかし、これからは、原則として顔写真付き本人確認書類等による確認が必要になります。

具体的には、運転免許証、マイナンバーカード、在留カードなどの提示を求められます。これらが用意できない場合、スクラップ業者側が買い取りを断ることがあります。持ち込みを担当する職人さんや従業員の方には、「顔写真付きの身分証」を常に携帯してもらう必要が出てきます。

法人の確認と担当者の紐付け

会社(法人)としてスクラップを売却する場合、確認事項が増えます。スクラップヤードに実際に持ち込んだ「担当者個人の本人確認(顔写真付き身分証)」に加えて、「売主である会社自体の確認」も同時に求められるようになるからです。

買い受け側の業者は、皆さまの会社の確認のため、登記事項証明書や印鑑登録証明書の提示、または法人番号公表サイト等の確認を求めることがあります。担当者が口頭で名乗るだけでは足りず、会社名義での取引として必要な確認書類が求められる場合もあります。

現金手渡しの制限と口座振込への移行

新制度では、スクラップ業者は「誰から、いつ、何を、いくらで買い取ったか」という取引記録を3年間保存する義務を負います。そして、取引記録には支払方法などの事項が含まれます。

ここで重要になるのが、一定の条件を満たす場合に本人確認が不要となる例外規定です。この例外規定を踏まえ、支払方法を口座振込とする事業者もあります。その場での現金化が難しくなる点には注意が必要です。

対策を怠った場合の「2大リスク」

「うちはずっと昔から同じヤードと付き合っているから、今まで通りで大丈夫だろう」と高をくくっていると、会社経営を揺るがしかねない大きな壁にぶつかる恐れがあります。想定される致命的なリスクを解説します。

買取拒否による資金繰りへの悪影響

新法では、届出義務違反や命令違反等に対して罰則や行政処分が定められています。つまり、買い手側の業者も必死なワケです。

必要な書類が整っていない場合、ヤード側が買い取りを断ることがあります。そうなると、廃材の処理や売却収入の確保に影響が出るおそれがあります。

法令違反による罰則と社会的信用の失墜

2026年現在、金属盗への警戒は警察を挙げて非常に強まっています。例えば、千葉県などの一部の自治体では、以前から独自の「特定金属類取扱業の規制に関する条例」がありましたが、今後は新法と条例の両方を意識した運用整理が必要になります。

万が一、皆さまの会社が「本人確認がルーズだから」という理由で、不適切なヤードや違法業者と取引を続けていた場合、立入検査や確認の場面で説明を求められるおそれがあります。さらに、建設業界においては、こうした法令違反の噂が立つだけでも元請け企業からの信頼を失い、最悪の場合は取引停止や、建設業許可の維持に関わる致命的なダメージになりかねません。

スクラップヤード・金属買取業者様向けサポート

そのため最近では、「自分が使っているスクラップヤードが、新制度へ本当に対応できているのか不安」というご相談も増えています。 特に千葉県では、すでに「千葉県特定金属類取扱業条例」が始まっており、新法と条例をあわせた対応が必要になるケースがあります。

当事務所では、スクラップヤード・金属買取業者さま向けに、「特定金属くず買受業」に関する届出制度対応サポートも行っています。 「付き合いのあるスクラップ業者が対応に困っている」 「本人確認や記録保存をどう運用すればいいか分からない」 といった場合は、下記ページもご覧ください。

今から準備すべき「現場のチェックリスト」

令和8年6月1日の施行日に向けて、経営者様や現場責任者様が今すぐ社内で手を打つべき具体的なアクションプランを提案します。直前になって慌てないよう、今から備えておきましょう。

  • 現場スタッフの身分証チェック
    スクラップの持ち込みを担当する可能性のある職人さんや従業員全員が、本人確認に使える身分証を持っているか確認し、携行をルール化する。
  • 法人の証明書類の準備
    会社の登記事項証明書(コピー可の場合もありますが、ヤードごとの規定に合わせます)や、法人番号がすぐに分かる書類をいつでも持ち出せるように整理しておく。
  • 取引先スクラップヤードへの確認
    普段使っている買い取り業者に対して、「6月1日以降の法人取引には何が必要か」「支払いは振込に変わるのか」を事前にヒアリングしておく。
  • すでに始まっている関連規制の再確認
    実は2026年現在、すでに運用が始まっている関連ルールもあります。

法改正を乗り切るためのまとめ

今回の銅線スクラップ売却に関する本人確認の厳格化は、一見すると電気工事業者様にとって負担が増えるだけの「厄介な法改正」に思えるかもしれません。しかし、見方を変えれば、徹底したルール化によって自社が「クリーンで法令遵守を徹底している優良な工事会社である」ということを、元請けや社会に対して堂々とアピールできるチャンスでもあります。

ルールを正しく理解し、現場一丸となって早めの準備を進めていきましょう。

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