「建設業許可って、ゼネコンとか大きなビル建てる会社が必要なヤツでしょ?」
「うちは店舗の内装とか、クロスの張り替えがメインだから関係ないよね?」
一人親方や内装業の方とお話ししていると、そんな声を耳にすることがあります。たしかに内装工事は、建物の骨組みを一から造るような工事と比べると、手軽なイメージがあるかもしれません。
ですが、その油断は非常に危険です。
結論から言うと、内装工事であっても「1件の請負代金が税込500万円以上となる」など、「軽微な建設工事」の範囲を超える場合には、原則として請負契約を締結する前に建設業許可が必要になります。もし「知らなかった」で済ませてしまうと、最悪の場合、今の仕事を続けられなくなる致命的なリスクが潜んでいます。
この記事では、内装工事において許可が必要になるケースや、意外と知られていない「落とし穴」について、専門用語をできるだけ使わずに分かりやすく解説していきます。
内装工事のよくある勘違い
税込み500万円の壁
建設業法という法律では、「軽微な建設工事」であれば許可がなくても請け負って良いことになっています。この「軽微な工事」の基準となるのが、「1件の工事請負代金が税込500万円未満かどうか」です(建築一式工事の場合は条件が異なりますが、内装工事の多くはこちらの500万円基準になります)。
つまり、建築一式工事以外の工事では、請負代金が税込500万円未満であれば原則として無許可でも請け負えます。一方、税込500万円以上の工事を請け負うには、原則として建設業許可が必要です。ここで注意したいのが「税込み」だということ。税抜460万円の工事でも、消費税10%を足すと506万円になり、許可が必要な工事に化けてしまうワケです。
内装工事ならではの落とし穴
「うちの工事単価で500万円なんて滅多にいかないよ」と思うかもしれません。
しかし、内装工事はカフェや美容室、オフィスなどの「店舗・商業施設」を手がけることも多いですよね。
スケルトン状態からの内装一式や、こだわりの輸入資材を使った空間デザインなどを請け負うと、500万円の壁なんてあっという間に突破します。手軽なイメージとは裏腹に、意外と単価が跳ね上がりやすいのも内装工事の特徴です。
建設業許可が必要なケース
税込み500万円以上の工事
先ほどお伝えした通り、建築一式工事以外の工事で、1件の請負代金が税込500万円以上となる工事を請け負う場合は、原則として、請負契約を締結する前に当該工事に対応する建設業許可が必要です。
内装仕上工事に該当する工事であれば、通常は「内装仕上工事業」の許可を検討します。元請・下請を問わず、請け負う工事ごとに判断します。
分割発注での合計超過
「500万円を超えそうなら、契約書を300万円と250万円の2つに分ければいいんじゃない?」
一見良さそうに思えますが…実はこれ、一番やってはいけない行動です。
1つの工事を、許可を免れる目的で正当な理由なく複数の請負契約に分割しても、各契約の請負代金を合算して軽微な建設工事に当たるかを判断します。つまり、書類上だけ2枚に分けても、実態が同じ店舗の内装工事であれば「合計550万円の工事」とみなされ、無許可営業として完全に法律違反になります。
材料費を注文者が負担するケース
ここが最も誤解の多いポイントです。たとえば、施主(注文者)がこだわりの高級システムキッチンや大理石の床材を自分で購入し、「取り付けだけお願い!」と依頼してきたとします。いわゆる「施主支給」というやつです。
取り付けの施工費(手間代)自体は100万円だとしても、注文者から材料の提供を受ける場合は、軽微な建設工事に当たるかの判定において、その材料の市場価格および運送費を請負代金に加算して計算します。
たとえば、施工費が100万円で、注文者から提供される材料の市場価格と運送費の合計が450万円であれば、軽微な建設工事に当たるかの判定では合計550万円として扱われます。この場合、施工費として受け取る金額が100万円であっても、原則として建設業許可が必要です。
【実例】よくある相談ケース
ここでは、実務上よくご相談いただく典型的な事例を2つ紹介します。(※実際にありそうな客観的なケーススタディです)
追加工事で上限を超えたケース
当初、税込450万円で飲食店の内装工事を請け負ったA社。工事を進めるうちに、施主から「壁も塗り直してほしい」「照明も追加したい」と追加工事の依頼を受けました。追加工事を含めると、請負代金の合計は税込520万円になる見込みです。
この場合、追加工事の内容・金額を確定し、変更契約を締結する前に、建設業許可の要否を改めて確認する必要があります。当初契約と追加工事が実質的に一体の工事であり、許可を免れる目的で契約を分けていたと判断される場合には、無許可営業となるおそれがあります。
一方で、当初は予見できなかった独立した追加工事かどうかなど、具体的な事情によって判断が分かれるため、金額が500万円に近づく段階で早めに専門家へ確認することが重要です。
元請けから取得を迫られたケース
B社は請負金額が常に200〜300万円程度のため、法律上は許可が不要な内装業者です。
しかしある日、長年の付き合いがある大手元請け企業から
「コンプライアンス(法令遵守)の都合上、来期の契約更新までに建設業許可を取ってくれないと、今後は現場に入場させられない」
と通告されてしまいました。
金額に関わらず、優良な職人であることを証明する「ライセンス」として許可取得を求められるケースは、確実に増えつつあります。
無許可営業の法的・金銭的リスク
拘禁刑や罰金
もし、許可がないのに500万円以上の工事を請け負ってしまったらどうなるのか。「ちょっと怒られて終わり」ではありません。建設業法違反として、無許可で建設業を営んだ場合は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処される可能性があります。法人の代表者や従業者が法人の業務に関して違反した場合には、行為者だけでなく法人にも罰金が科される両罰規定があります。
5年間の許可取得不可リスク
さらに、無許可営業など建設業法に違反して罰金刑に処せられた場合は、その刑の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から5年間、建設業許可を受けられない欠格要件に該当します。また、拘禁刑以上の刑に処せられた場合も、同様に5年間の欠格要件に該当します。 事業を拡大しようと思っていた矢先に5年間も足止めを食らうのは、会社にとって死活問題ですよね。
元請けからの信頼喪失と取引停止
法律による罰則だけでなく、ビジネス上のダメージも計り知れません。無許可業者に一定規模以上の工事を発注した元請業者についても、発注経緯や関与の程度によっては、監督行政庁から事情確認や指導等を受ける可能性があります。また、発注者・元請・取引先からコンプライアンス上の懸念を持たれ、取引の縮小や停止につながるおそれがあります。失った信用を取り戻すのは、罰金を払うよりもはるかに難しいといえます。
近年の取引先審査と制度対応
CCUS連携とコンプライアンス厳格化
2026年現在、建設業界で避けて通れないのが「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の普及です。
現場の技能者の資格や就業履歴をデータ管理する仕組みですが、大手や公共工事の現場では、入場時のチェックがかつてないほど厳格化しています。
CCUSでは、事業者情報として建設業許可に関する情報も登録・確認の対象となります。
ただし、CCUSへの登録自体が直ちに建設業許可の保有を必須とするわけではありません。
一方で、元請会社や発注者が独自の入場基準・協力会社基準として建設業許可、社会保険加入、CCUS登録等を求める例はあり、取引先の基準を事前に確認する重要性は高まっています。
社会保険加入と許可申請の同時準備
建設業許可では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、加入義務のある事業所が適切に加入手続を行っていることが要件です。したがって、加入義務があるにもかかわらず未加入のままでは、原則として許可の取得・更新はできません。
もっとも、個人事業主で常用雇用者がいない場合など、制度上の適用関係は事業形態や従業員の状況によって異なります。 労働環境のホワイト化が業界全体のテーマになっている今、許可取得を検討するタイミングは、自社の労務環境や保険加入状況をクリーンに整える最高のチャンスとも言えます。
許可取得へのスムーズなステップ
要件確認(経営業務の管理を適正に行うに足りる能力・営業所技術者等)
建設業許可を取るためには、いくつか高いハードルを越える必要があります。中でもつまずきやすいのが、建設業の経営経験や組織体制に関する「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」の要件と、営業所ごとに専門知識・資格・実務経験を備えた人を置く「営業所技術者等」の要件です。
以前は「経営業務の管理責任者(経管)」「専任技術者(専技)」と呼ばれることが多かった項目です。ご自身や役員・従業員がどの要件で証明できるかを、最初に確認することが重要です。
書類収集と専門家への相談
要件を満たしていると分かっても、それを役所に認めてもらうための「裏付け書類」を集めるのがまた一苦労です。要件を満たしていると分かっても、それを許可行政庁に認めてもらうための裏付け書類を集める必要があります。
必要書類は、申請する許可区分、証明する経営経験・実務経験の内容、申請先の自治体の取扱いによって異なりますが、工事請負契約書、注文書・請書、請求書、入金記録、確定申告書、登記事項証明書などの確認を求められることがあります。日中は現場に出て、夜に疲れた体で慣れない書類仕事をするのは本当に大変ですよね。
だからこそ、私たち行政書士のような専門家がいます。面倒な書類作成や役所とのやり取りを丸投げしていただくことで、皆さんは本業である「現場の仕事」に100%集中することができます。
「うちの会社、そろそろ許可を取ったほうがいいのかな?」
「要件を満たしているかだけでも知りたい」
そんな風に少しでも気になったら、一人で悩まずに、まずは専門家に状況をお聞かせてください。
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