「一人親方だと建設業許可は取れないって聞いたんだけど…」
たまに現場の職人さんから、こうした不安の声を耳にすることがあります。結論からお伝えすると、個人事業主のままでも建設業許可は取れます。会社を設立しなければならない、という決まりはありません。
ただ、クリアすべき特有のハードルがあるのも事実です。今回は、一人親方が建設業許可を取るための条件や、2026年現在の最新事情について、分かりやすく紐解いていきます。
一人親方の建設業許可。結論と誤解
「一人だと取れない」という噂がどこから来るのか、まずはその真相を整理しておきましょう。
個人事業主の取得可能性
建設業法という法律では、許可の対象を「法人」に限定していません。
一人で現場を回し、確定申告を個人で行っている一人親方であっても、要件さえ満たせば何の問題もなく許可を取得できます。法人であるかどうかは関係ありません。
法人化との関係
ではなぜ「法人化が必須」と誤解されがちなのでしょうか。それは、元請け企業がコンプライアンス(法令順守)やインボイス制度への対応から、「できれば法人と取引したい」というケースが増えているからです。
許可取得自体に法人化は不要ですが、取引先の要望に合わせて「許可取得と同時に法人化する」人が多いため、情報が混ざっているのではないでしょうか。
現場から寄せられる典型的な相談事例
ここでは、よくあるケースを2つご紹介します。
事例1・元請けから許可取得を迫られたAさん
「来月から許可がない業者は現場に入れないって言われたんです。どうにかなりませんか?」
長年付き合いのある元請けから急にタイムリミットを突きつけられた大工のAさん。
実はこのパターン、徐々に増えている印象です。元請企業では、法定福利費、社会保険、施工体制、下請事業者の許可状況などについて確認を求める動きが強まっています。
事例2・実績証明でつまずいたBさん
「腕一本で15年やってきたけど、昔の書類なんて捨てちゃったよ」
内装業のBさんは、現場での経験は十分にありました。しかし、いざ許可を取ろうとしたら、過去の工事請負契約書や請求書、確定申告書の控えが手元に残っていませんでした。建設業許可は「口頭での経験」を認めてくれません。書類という客観的な証拠でどうやって過去を証明するか、ここが一人親方にとって最大の難関になりやすいです。
絶対クリアすべき5大要件
建設業許可を取るためには、以下の5つの壁を越える必要があります。専門用語はなるべく省いて解説します。
1. 経営業務を適正に管理する能力
建設業の経営について一定の経験を持つ人がいることが必要です。
個人事業主本人が、建設業の経営に5年以上携わってきた場合は代表的な要件充足ルートになります。
証明には確定申告書に加え、実際に建設工事を請け負っていたことが分かる契約書、注文書、請求書、入金記録などが必要になることがあります。
2. 営業所技術者等の配置
申請する業種について、一定の技術的能力を持つ「営業所技術者等」を営業所ごとに置く必要があります。
対応する国家資格があれば分かりやすいですが、学歴と実務経験、または原則10年以上の実務経験で認められる場合もあります。必要年数や認められる経験は業種・資格・学歴により異なるため、個別確認が必要です。
3. 誠実性
請負契約に関して、詐欺や脅迫といった不正、または不誠実な行為をするおそれがないこと。通常の事業を真面目に営んでいれば、ここは問題なくクリアできます。
4. 財産的基礎(資金力)
「途中で資金ショートして工事を投げ出す心配がないか」を見られます。具体的には、銀行の預金残高証明書で「500万円以上」の残高を証明するのが一番シンプルです。
5. 欠格要件への不該当
自己破産して復権していない場合や、一定の犯罪で刑罰を受けてから日数が経っていない場合などは、許可を受けられません。これも、一般的な生活を送っていれば該当しないことがほとんどです。
2026年最新!法改正と業界トレンド
一人親方を取り巻く環境は、年々厳しくなっています。2026年現在、知っておくべき最新動向をまとめました。
法改正による適正化の波
国土交通省は「偽装一人親方(実態は労働者なのに個人事業主として扱われている人)」の排除に本腰を入れています。社会保険逃れを防ぐための規制も強化されており、元請け企業は「適正な事業者」であることの証として、建設業許可をより強く求めるようになっています。
社会保険とCCUS(建設キャリアアップシステム)の連携
建設業許可の申請では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況を記載します。加入義務があるのに未加入の場合、行政指導や元請との取引上の支障につながる可能性があります。
もっとも、一人親方本人に必要な保険制度は、従業員の有無や事業形態によって異なるため、個別の確認が必要です。
放置厳禁。無許可営業のリスクと代償
「面倒だから今のままでいいや」と放置してしまうと、後々大きなツケを払うことになりかねません。
法的なペナルティ
許可がない状態で、1件500万円(税込)以上の工事(建築一式工事では税込1,500万円以上)を請け負うと「建設業法違反(無許可営業)」となります。これは非常に重い罪で、最大で3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
金銭・信用面の損失
無許可営業が発覚すると、請負った本人だけでなく、発注した元請側も下請契約の適法性を問われ、行政上・取引上のリスクを負う可能性があります。そのため、元請が下請事業者に許可の有無を確認する場面は増えています。
最短で取得するための2ステップ
日中は現場でクタクタになるまで働き、夜に複雑な役所の書類と格闘するのは、正直現実的ではありません。スムーズに進めるための手順をご紹介します。
ステップ1「必要書類の収集・確認」
まずは手元にある過去の確定申告書(直近5年〜10年分)と、工事の請求書や通帳の束を探し出してください。これらが揃っているかどうかで、その後の戦略が大きく変わります。
ステップ2「要件のセルフチェックと専門家相談」
自分が「5大要件」を満たせそうかざっくり確認します。
「自分のこの書類で証明になるの?」と迷ったら、専門家にぜひご相談ください。
まとめ
一人親方でも、要件を満たし、過去の経験をしっかり書類で証明できれば、建設業許可は取得できます。
建設業許可は、法定の経営・技術・財産的基礎等の要件を満たしていることを前提に営業を行うための許可です。元請や発注者に対し、事業体制を説明しやすくなる効果が期待できます。
今後の事業の安定と拡大のために、早めの準備をご検討ください。
なお、許可を取得しても、どの業種でも自由に請け負えるわけではありません。取得した許可業種の範囲で営業する必要があり、公共工事の入札参加や一定規模以上の下請発注には、別途の手続・許可区分が必要になる場合があります。
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