「旧・専任技術者」との違いは?営業所技術者への移行ポイント

「旧・専任技術者」との違いは?営業所技術者への移行ポイント

目次

建設業許可の更新でつまずかないために 営業所技術者という言葉に変わった理由

建設業許可の手続きって、ふだんは意識しないですよね。
更新の時期が近づいて、あれこれ書類をそろえ始めた段階で、初めて制度の存在感が増してくる。

そんなタイミングで、最近よく出てくるのが営業所技術者という言葉です。
これまで専任技術者と呼んでいたものが、呼び方としては営業所技術者へ。特定建設業の場合は特定営業所技術者になり、まとめて営業所技術者等と呼ばれます。

令和6年12月13日から、申請様式もこの呼称に合わせて変わっています。

呼び方が変わっただけでしょ と思った人ほど要注意

ここ、つい軽く見がちです。
名前だけ変わったなら、現場の段取りには関係ないはず。そう感じるのは自然です。

ただ、建設業許可の世界では、言葉が変わるときは運用も一緒に動くことが多い。
今回も、営業所という単位を強く意識させる呼び方になっています。

これが何を意味するかというと、

営業所に置く技術者は、
「現場を回すための人というより、営業所で契約や技術的判断を支える人」として見られやすくなる、ということです。

先に結論 いま確認すべきは肩書きではなく体制

この章で先に結論だけ言うと、ここがポイントです。

書類上の肩書きが専任技術者から営業所技術者に変わったことよりも、自社の体制が営業所単位で説明できる形になっているかが大事。

建設業許可は、取るときより維持するときに差が出ます。
経営事項審査を受けたい、公共工事も視野に入れたい、金融機関にきちんと説明したい。そうなったとき、技術者の位置づけが曖昧だと足元が揺れます。

もう一つの変化 技術者不足を前提に制度が組み替わり始めている

最近の改正は、技術者が足りない現実を前提にしています。
国土交通省は、令和6年12月13日から、監理技術者等の専任義務の合理化や、営業所技術者等が一定の条件で現場の主任技術者等を兼ねられる仕組みなどを整備しています。

ここは誤解されやすいのですが、誰でも自由に兼ねてよい、ではありません。
条件や運用があり、書類の整合性も求められます。詳しい話は後の章で扱いますが、入口としては、制度がゆるくなったのではなく、説明責任が増えたと捉えるとズレにくいです。

このシリーズでやること 読んだあとに行動が一つ決まる状態へ

次章以降では、旧専任技術者と営業所技術者の違いを、現場感覚に合わせて噛み砕きます。

  • よくあるつまずき
    現場が回っているのに、更新や変更届で止まるパターン
  • 制度の骨格
    営業所技術者等の考え方と、どこを見られやすいか
  • 明日できる確認
    社内でこれだけ押さえれば安心、というチェックの順番

読み終わるころには、建設業許可の更新や経営事項審査の準備をするときに、何から手を付ければいいかが分かるはずです。次章では、実際によくある相談例から入っていきます。

人はいるのに許可が危ない 更新直前に気づく落とし穴

建設業許可の相談で、けっこう多いのがこのパターンです。
現場は回っている。技術者もいる。仕事も取れている。
それなのに、更新や変更届の段階で手続きが止まりかける。

なぜかというと、建設業許可で見られるのは腕の良さだけではなく、営業所としての体制が説明できるかだからです。営業所に置く技術者は、法律上も営業所単位で位置づけられています。

こんなときに一気に焦る

更新の案内が来たタイミングで、次のような状況に気づくケースがあります。

  • 技術者が現場に出っぱなしで、営業所での関与が説明しづらい
  • 会社の成長で営業所や支店が増えたのに、技術者の配置が昔のまま
  • 技術者が退職予定、または高齢で稼働が読めない
  • 経営事項審査を受けたいのに、技術者体制の説明が弱い
  • 金融機関から体制を聞かれたときに、言葉に詰まる

現場の感覚だと、技術者は現場にいればそれで十分と思いやすいですよね。
でも許可の視点だと、営業所で契約や技術的判断に関与できる体制かが問われやすい。ここがズレの原因になりがちです。

まずは様式の言葉が変わっている

令和6年12月13日以降、専任技術者の呼び方が営業所技術者などに変わり、申請や届出で使う様式も更新されています。古い様式のまま提出しようとして差し戻し、というのは意外と起きます。

手続きって、忙しいと最後にまとめてやりたくなります。
だからこそ、様式だけでも先に最新かどうか確認しておくと安心です。

体制の説明が弱いと後から効いてくる

ここで少しだけ嫌な話をします。
更新は通った。でも次の局面で困る。こういう流れがあるんです。

経営事項審査や公共工事を意識し始めたとき

点数そのものだけでなく、会社の体制を説明できるかが大事になります。
技術者が誰で、どの営業所の体制がどうなっているか。言語化できないと準備が進みません。

資金調達の場面で聞かれるとき

金融機関との面談で、現場体制や技術者について質問が出ることがあります。
このとき、資格はありますだけだと弱い。営業所としてこう回しています、と言えると強いです。資金調達支援の現場でも、ここは差になります。

兼務できるようになったから大丈夫 で片づけない

最近は、監理技術者等の専任義務の合理化や、営業所技術者等が一定条件で現場の技術者を兼ねられる制度も整備されています。

ただし、条件付きです。金額要件などの枠もあります。

つまり、制度が楽になったというより、使いこなすための説明が増えたと考える方が安全です。

この章のまとめ 次章で掘るポイント

2章で伝えたかったのは、これです。

  • 営業所技術者は、名前の問題より体制の説明の問題
  • 様式や運用が変わっているので、更新直前に慌てやすい
  • 経営事項審査や資金調達まで見据えると、早めに整えた方が得

次章では、営業所技術者とは結局何をする立場なのか、どこを見られやすいのかを、制度の骨格からやさしく整理します。

結局なにが変わったのか 営業所技術者をやさしく整理する

「営業所技術者って、結局なにをする人なの?」
「名前が変わっただけなの、それとも要件まで変わったの?」

ここが曖昧なままだと、更新や変更届のときに毎回モヤモヤします。なのでこの章では、制度の骨格だけをスッと通して整理します。

まず言葉の整理

営業所技術者等とは何か

令和6年12月13日施行の改正対応で、技術者まわりの呼び方が整理されました。国土交通省の案内でも、監理技術者等の専任義務の合理化とあわせて、営業所技術者等という枠組みで説明されています。

実務上は、こう覚えるのが分かりやすいです。

  • これまで専任技術者と呼んでいた営業所に置く技術者が、営業所技術者という呼称に整理された
  • 申請書類でも営業所技術者等一覧表のように、営業所技術者等という表現で統一されていく

ポイントは、営業所という単位が前面に出たことです。現場の技術者ではなく、営業所の体制を支える技術者としての意味合いが強まっています。

旧専任技術者と何が違うのか

要件よりも見せ方が変わる

誤解されやすいところからいきます。
多くの会社にとって、いきなり必要資格や実務経験の基準が別物になった、というタイプの改正ではありません。

一方で、次の点は運用に影響しやすいです。

  • 営業所が契約を締結する拠点であることがより明確に意識される
  • 営業所と現場の関係を、説明できる状態にしておく必要がある

なぜなら、改正後の運用資料やマニュアルでも、営業所から当該工事現場という読み替えや、契約を締結した営業所名の記載など、営業所を起点にした整理が入っているからです。

難しい言い方に聞こえますが、現場感にするとこうです。
誰が、どの営業所で、どの契約に関わる立場なのか。これを言葉にできる会社が強い、ということです。

営業所技術者の役割

現場の監督ではなく営業所の技術的な背骨

営業所技術者は、現場代理人みたいにずっと現場に張り付く役ではありません。営業所に常勤して、契約や工事の進め方について技術的に判断できる立場として置かれます。

手続きの世界で見られやすいのは、ざっくりこの二つです。

常勤性

いることになっているでは足りない

営業所に置く技術者として、営業所に常勤しているか。
これは昔からの王道チェックです。

雇用関係

直接的かつ恒常的か

マニュアル上も、営業所技術者等が所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが要件として明確に書かれています。

ここ、現場ではつい見落としがちです。
本人は協力会社のつもり、会社は社員扱いのつもり、みたいなズレが起きると説明が苦しくなります。

ここからが新しい論点

営業所技術者等の兼務が制度として用意された

改正の流れの中で大きいのは、技術者不足への対応として、専任義務の合理化や兼務の仕組みが整備されたことです。国土交通省のページでも、監理技術者等の専任現場兼務と並んで、営業所技術者等の専任現場兼務が可能になる旨が示されています。

ただし、何でも自由に兼ねていいわけではありません。例えば専任配置の特例に関しては、請負代金の額が一定未満である必要があるなど、明確な上限があります。

この章の時点で押さえるべき結論はこれです。
兼務が可能になった話は、手続きが簡単になった話ではなく、要件を満たしていると説明できる会社が得をする仕組みです。

書類も変わっている

様式でつまずかないための目印

実務で一番分かりやすい変化は、様式の名称です。
国土交通省の許可関連書類一覧でも、営業所技術者等一覧表が登場しています。

更新や業種追加のときに、社内に残っている旧ひな形をそのまま使うと、入口でつまずきやすい。ここは地味ですが効きます。

次に見るべきは自社がどのパターンか

本章は制度の骨格だけを整理しました。

  • 営業所技術者は営業所単位の体制を支える技術者として位置づけが整理された
  • 雇用関係や営業所起点の説明がより重要になる
  • 兼務の仕組みはあるが、金額要件など条件がある
  • 様式も営業所技術者等に合わせて動いている

次章では、ここから一歩進めて、実際に役立つ行動提案に落とします。
自社がどのパターンで、何を確認すれば事故らないか。チェックの順番をそのまま使える形でまとめます。

明日からできる!営業所技術者まわりの整え方とチェックの順番

制度の説明を聞いても、結局どこから触ればいいのか分からない。
ここが一番もったいないところです。

なので本章は、順番どおりに確認すれば迷いにくいチェックリスト形式でいきます。建設業許可の更新、業種追加、経営事項審査を見据えた準備にも、そのまま流用できる流れです。

最初に確認

営業所技術者は誰で、どの営業所にひも付いているか

営業所技術者は営業所単位の配置です。ここが曖昧だと、後の整理が全部ぐらつきます。

やること

  • 営業所ごとに、営業所技術者が誰かを書き出す
  • 複数営業所がある場合、兼ねていないかを確認する
  • 特定建設業なら、特定営業所技術者としての整理になっているかも見る

ここで引っかかるのは、支店や資材置場を営業所として扱っているケースです。社内では支店でも、制度上の営業所として届け出ていなければ別の整理になります。

次の確認

常勤と雇用関係が説明できる形になっているか

営業所技術者等は、所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係が求められます。
この条件は、書類の整合性が弱いと一気にリスクになります。

よくあるつまずき

  • 本人は外注のつもり、会社は社員のつもり
  • 役員就任や出向、兼業が絡んで説明が難しくなる
  • 常勤のはずなのに、現場が遠方で営業所に戻らない

やること

  • 雇用形態と給与支払いの実態を確認する
  • 勤務実態を説明できる材料を整理しておく
  • 兼業や別会社の関与があるなら、線引きを言葉にする

ここは、更新の直前にやると苦しくなりがちです。早めに整えるほどラクになります。

ここが分岐点

営業所技術者が現場の技術者を兼ねる可能性があるか

改正で、営業所技術者等が一定の条件で現場の技術者を兼務できる仕組みが整備されています。
ただし条件付きで、専任の特例には請負代金の額が一定未満など上限があります。

ここをどう捉えるかで、実務の動きが変わります。

兼務を使うときの考え方

  • 兼務は便利だが、説明がセットで必要
  • 条件に当てはまる工事かどうか、後から確認できる状態が必要
  • 兼務を前提に人員を薄くすると、別の工事で詰む可能性がある

やること

  • 自社の工事規模が、専任が求められやすいゾーンかを把握する
  • 兼務を使うなら、どの工事で使うかを社内で決める
  • 使わないなら、無理に制度に乗らないと決めるのも立派な戦略

制度を使いこなす会社は強いですが、使わない方が安全な会社もあります。これは本当にケースバイケースです。

最後に確認 様式と社内ひな形が最新か

地味ですが、差し戻しを減らす即効性が高いのがここです。

国土交通省の書類一覧でも、営業所技術者等一覧表が用意されており、呼称に合わせた様式運用に移っています。

やること

  • 社内の旧ひな形に専任技術者という文言が残っていないか確認
  • 最新の様式を前提に、社内の記入ルールを更新する
  • 更新や業種追加の前に、一度だけ総点検する

チェックの順番はこの四つで迷いにくい

  • 誰がどの営業所の営業所技術者かを固定する
  • 常勤と雇用関係を説明できる形にする
  • 兼務を使うかどうかを方針として決める
  • 様式とひな形を最新にする

次章は、ここまでの内容を踏まえて、建設業許可や経営事項審査、資金調達支援の場面でどう活かせるか、行動喚起までつなげます。

守りだけじゃない、営業所技術者の整備が経営をラクにする

営業所技術者への移行は、手続きの話に見えます。
でも実際は、経営の話に近いです。

なぜなら、建設業許可の維持は、受注の土台だからです。
そして、その土台が安定すると、次の動きが取りやすくなります。

更新で慌てない会社は、判断が速い

更新直前にバタつく会社は、体制の説明が固まっていないことが多いです。
逆に言うと、営業所技術者の整理ができている会社は、判断が速い。

  • 業種追加を検討するとき
  • 経営事項審査を受けるか迷うとき
  • 公共工事の参加を考えるとき

こういう局面で、社内の会話が早く終わります。
根拠が整っているからです。

経営事項審査で見える化が進むと、外部説明が強くなる

経営事項審査は、点数の話に見えますが、実際には会社の見える化です。
技術者体制、完成工事高、財務状況。数字と体制がセットで並びます。

ここで営業所技術者の整理が甘いと、準備に時間がかかる。
逆に、整理ができていれば、書類づくりがただの作業になります。

そして、この見える化は金融機関との対話にも使えます。
資金調達支援の場面では、会社の体制を言語化できるかが強みになります。

小さな相談でも早めが得 手遅れになる前に整える

手続きの相談って、重く感じますよね。
まだ問題が起きていないのに相談するのは気が引ける。分かります。

でも建設業許可は、問題が見えた時点で選択肢が減っていることがあります。
技術者の退職、営業所の増設、急な受注増。

こうなると、打てる手が少ない。

だからこそ、小さな確認の段階で動いた方が得です。

こんな状態なら相談のタイミング

  • 更新が半年以内に迫っている
  • 技術者が高齢で、引継ぎが不安
  • 営業所が増えた、または増やす予定がある
  • 経営事項審査や公共工事を検討し始めた
  • 資金調達で体制説明を求められた

行動喚起 今日できる一歩だけ決めてみる

最後に、今日できる一歩を一つだけ。

営業所ごとに、営業所技術者が誰かを紙に書き出す。

これだけで、話が進みます。
書き出した瞬間に、ここは危ないかも、という違和感が出ることが多いからです。

必要なら、その時点で専門家に確認する。
制度と現場の両方を見ながら、どう整えるのがいちばん負担が少ないかを一緒に考える。そういう役割を担う行政書士もいます。

建設業許可、経営事項審査、資金調達。
どれも別物に見えて、土台は同じです。

営業所技術者の整理は、その土台を固める作業。
守りであり、次の攻めの準備でもあります。