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建設業の人手不足は、もう一時的な問題ではない
最近、建設業に関わる方と話していると、ほぼ必ず出てくる話題があります。
そう、人の話です。
求人を出しても応募がない。
来てもすぐ辞めてしまう。
そもそも若い人が業界に入ってこない。
おそらく、この記事にたどり着いた方も、どこかで同じ壁にぶつかっているのではないでしょうか。
みんな感じているけど、言葉にしづらい違和感
現場では、昔から人手不足だと言われてきました。
ただ最近は、少し質が変わってきています。
以前は忙しい時期だけ足りない、という感覚だったのが、今は常に足りない状態が当たり前になってきました。
仕事はある。
引き合いも来る。
でも、受けきれない。
この状況、正直しんどいですよね。
国も本気で認め始めた人手不足という現実
ここで注目したいのが、国の動きです。
特定技能や、これから始まる育成就労制度では、受け入れ見込み数という考え方が導入される見込みです。
簡単に言うと、国内の努力を全部やっても、それでも足りない人数を数値で示す、という仕組みです。
つまり国は、
『建設業は日本人だけでは回らない』
という前提に立ち始めた、ということです。
これはかなり大きな転換点です。
でも現場の悩みは、人だけじゃない
ここで少し立ち止まって考えてみてください。
人が足りない。
だから外国人材を使えばいい。
話としては分かりやすいですが、実務ではそう単純ではありません。
建設業許可はどうなっているか。
経営事項審査の点数は足を引っ張っていないか。
人を育てるだけの資金余力はあるか。
こうした土台が整っていないと、制度があっても使えません。
この記事でお伝えしたいこと
この記事では、育成就労や特定技能の制度そのものを細かく説明することが目的ではありません。
それよりも、『人手不足時代に、建設業として何を整えておくべきか』という視点で話を進めていきます。
制度の話と、現場の経営の話。
この二つをつなげて考えられるようになると、見える景色が変わってきます。
次の章では、実際の現場でよく聞く人手不足の悩みを、もう少し具体的に掘り下げていきます。
記事をご覧になった方が、「ウチのことかも」と感じてもらえたら、嬉しく思います。
人が来ない会社と、なぜか回っている会社の違い
人手不足は業界全体の問題です。
それなのに、現場を見て回ると、不思議な差があることに気づきます。
どこも条件は似ているはずなのに、人が定着している会社と、常に人を探している会社がはっきり分かれる。
この違い、何だと思いますか。
よく聞く現場の声は、だいたい同じ
相談を受ける中で、よく出てくる言葉があります。
- 若い人が入ってこない
- 求人を出しても反応がない
- 紹介会社は高すぎる
- 教えても辞めてしまう
どれももっともです。
どの会社でも起きています。
でも、ここで一つ気をつけたいのは、
『人が足りない理由を、全部外のせいにしてしまっていないか』
という点です。
実は見られている、現場以外の部分
働く側の立場で考えてみると、見るポイントは意外とシンプルです。
- 仕事が安定していそうか
- 給料がちゃんと出そうか
- 元請との関係は大丈夫そうか
- 会社としてちゃんとしているか
このちゃんとしているかを判断する材料の一つが、建設業許可です。
許可があるかどうかは、信頼の最低ラインとして見られています。
さらに、元請や金融機関は、経営事項審査の点数を通じて会社の体力を判断します。
点数が低いと、仕事も資金も回りにくくなり、その影響が現場に出てきます。
人手不足は、経営の歪みが表に出ただけ
現場が忙しく、人が足りない状態が続くと、どうしても無理が出ます。
- 残業が増える
- 教育の時間が取れない
- 現場が荒れる
- さらに人が辞める
悪循環ですね。
でも、これは人の問題というより、経営全体の設計の問題であることが多いです。
許可、経審、資金繰り。
このあたりが後回しになっていると、現場にしわ寄せが来ます。
外国人材の前に、考えてほしいこと
最近は、育成就労や特定技能に期待する声も増えています。
もちろん、有効な選択肢です。
ただし、ここで一つツッコミを入れたくなります。
受け入れる準備、できていますか。
書類だけ整っていても、教育体制や資金の余裕がなければ、うまく回りません。
制度は魔法ではありません。
土台があって、初めて力を発揮します。
次の章では、国が示している受け入れ見込み数の考え方を、できるだけ噛み砕いて説明します。
数字の話ですが、現場の感覚とつながる内容なので、ぜひ続けて読んでみてください。
国の数字をそのまま信じていい?受け入れ見込み数の考え方
ここから少し制度の話になります。
ただ、条文を読むような話はしません。
現場の感覚とどうつながっているのか、そこを意識して整理します。
受け入れ見込み数とは、上限ではなく現実の整理
ニュースなどで見かける受け入れ見込み数という言葉。
初めて聞くと、外国人を何人まで入れていいかの上限のように感じるかもしれません。
でも、実際は少し違います。
この数字は、
『これだけ努力しても、これだけ足りません』
という不足分を計算した結果です。
まず必要な人数を出す
基準になるのは、将来この業界に必要とされる就業者数です。
建設需要や工事量を踏まえて、このくらいは必要だろう、という人数を出します。
次に、今いる人を差し引く
現在働いている人の数を引きます。
ここまでは感覚的にも分かりやすいと思います。
さらに、国内で何とかできる分を引く
ここがポイントです。
- 生産性向上による省人化
- 賃上げなどによる新規就業者
- 高齢者や女性の活用
こうした国内努力で補える人数を、さらに差し引きます。
それでも足りない分が、受け入れ見込み数
全部引いても、まだ足りない。
この残りが、外国人材の受け入れ見込み数になります。
つまり、『安易に外国人に頼る前提』ではなく、『やれることは全部やった後の数字』
という位置づけです。
育成就労は、時間をかけて戦力にする制度
特定技能と育成就労は、同じ外国人材制度でも性格が違います。
育成就労は、名前のとおり育てる前提の制度です。
すぐに即戦力になることを期待する仕組みではありません。
だからこそ、
- 教育できる体制
- 長く働いてもらう前提の職場環境
- 資金面の余裕
こうした要素が欠けていると、制度の良さが活かせません。
建設業は、すでに数字が示されている
建設分野では、特定技能だけでも数万人規模の受け入れが想定されています。
そこに、育成就労が加わります。
この数字が意味するのは、
『人手不足は一時的ではない』
という国からのメッセージです。
人が戻ってくるまで待つ、という選択肢は、現実的ではなくなりつつあります。
制度は突然始まる、準備は待ってくれない
ここで一つ、実務の話をします。
制度は、ある日突然スタートします。
その時点で、
- 建設業許可が不安定
- 経営事項審査を意識していない
- 資金繰りがギリギリ
こうした状態だと、使いたくても使えません。
逆に言えば、
『今すぐ外国人材を雇う予定がなかったとしても雇える状態にしておくこと』
これが、これからの経営では重要になります。
次の章では具体的に、
- 今から何を整えておけばいいのか
- 建設業許可、経営事項審査、資金調達をどう結びつけるか
その行動の話に進みます。
人を増やす前にやるべきこと 現場が回る会社の共通点
制度の話をここまで読まれて、
「じゃあ結局、何をすればいいのか」
そう感じている方も多いと思います。
答えは意外とシンプルです。
人を増やす前に、会社の土台を整える。
これに尽きます。
建設業許可は、単なる資格ではない
「建設業許可は、仕事を取るための紙切れ」
そう思われがちです。
でも実務の現場では、少し違います。
- 許可があるか
- 更新はきちんとされているか
- 要件を満たし続けているか
これらは、元請や発注者から見たときの安心材料です。
許可が不安定な会社に、長期の仕事は回りません。
人も、将来が見えない会社には残りにくいものです。
経営事項審査は、会社の体力テスト
「経営事項審査は、公共工事をやらない会社には関係ない」
そう思われることもあります。
ただ、実際には違います。
経審の点数は、
- 会社の財務体質
- 経営の安定性
- 継続性
こうした要素を数値で示したものです。
金融機関や元請は、この数字を通じて会社を見ています。
点数が低いと、仕事の幅も、資金調達の選択肢も狭くなります。
人材戦略と資金調達はセットで考える
育成就労にしても、特定技能にしても、人を育てるには時間とお金がかかります。
最初から戦力になることは、ほとんどありません。
その間、会社が持ちこたえられるかどうか。
ここで重要になるのが、資金調達です。
- 銀行融資
- 制度融資
- 補助金
こうした選択肢を、必要になってから探すのでは遅いこともあります。
現場が回っている会社は、準備が早い
うまく回っている会社に共通するのは、
今すぐ使わない制度でも、使える状態にしている
という点です。
- 許可を整える
- 経審を意識する
- 財務を見える化する
これらは、将来の人材確保への投資でもあります。
ここまで整っていれば、
- 育成就労を使う
- 特定技能を使う
- 使わない
どの選択も取れます。
小さな一歩でいい
いきなり全部やる必要はありません。
まずは、
- 許可は問題ないか
- 決算内容は説明できるか
- 資金繰りを把握できているか
このあたりを確認するだけでも違います。
次の章ではここまでの話を踏まえ、
「人手不足時代の建設業経営をどう考えるか」という、最後のまとめに進みます。
人手不足の時代こそ、経営の差が静かに広がる
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
『人が足りない』という悩みは、決してあなたの会社だけのものではありません。
国が数字として示し、制度を作り直していることからも分かるように、建設業の人手不足はこれからもしばらく続きます。
人材対策は、特別なことではない
育成就労や特定技能という言葉を聞くと、何か大きな決断が必要なように感じるかもしれません。
でも実際には、突然外国人材を入れるかどうかを決める話ではありません。
- 許可が安定しているか
- 経営事項審査を意識した経営ができているか
- 資金の流れを把握できているか
こうした基本が整っていれば、選択肢は自然と広がります。
今すぐ動くべきなのは、制度ではなく足元
人手不足を感じたとき、新しい制度に目が向くのは自然なことです。
ただ、少しだけ視点を変えてみてください。人が来ない原因は、制度の有無ではなく、
- 会社の状態が見えにくいこと
- 将来が想像しにくいこと
にある場合も少なくありません。
足元を整えることは、結果として人材対策にもなります。
誰かに相談するという選択肢
許可や経営事項審査、資金調達。
これらは現場の仕事とは違い、どうしても後回しになりがちです。
でもだからこそ、実務として日常的に扱っている人に一度整理してもらう
というのは、十分に意味があります。
行政書士は、制度と現場の間に立つ存在です。
表に出る仕事ではありませんが、経営の選択肢を増やす役割を担っています。
静かに差がつく時代
これからの建設業は、一気に勝ち負けが決まる世界ではありません。
少しずつ、整えている会社と、そうでない会社の差が広がっていきます。
今日すぐ何かを変えなくても構いません。
まずは、自社の状態を知ることから始めてみてください。
人手不足の時代は、同時に、経営を見直すチャンスの時代でもあります。
この記事が、そのきっかけになれば幸いです。

