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4月採用を控える企業が感じる不安と、制度変更がもたらす追い風
4月の採用シーズンが近づくと、企業は独特の緊張感を抱え始めます。とくに留学生を採用予定の企業にとって、年末から年明けは在留資格変更の段取りが成否を分ける時期です。
採用自体が順調に進んでいても、在留資格の審査が遅れれば、4月から予定していた勤務開始がずれ込むことがあります。
現場では配置計画や工期がすでに動き出していることも多いため、勤務開始日のずれは思った以上に大きな影響を生みます。
添付リーフレットでも示されているように、出入国在留管理庁は1月から3月は申請が集中し、審査期間が伸びやすいと明確に注意喚起しています。
つまり、4月採用を見据える企業にとって、年内から1月末までに申請を済ませることが非常に重要になるわけです。
さらに2025年12月から、留学から就労(技術・人文知識・国際業務、研究)への変更について、新たに特定条件を満たす場合は提出書類の一部を省略できる制度が始まりました。
この制度は、採用準備を急ぐ企業にとって大きな助けになります。書類の点数が減れば、準備の負担が軽くなり、申請遅延のリスクも下がります。ただし、どの学生や企業が対象になるのかは少し複雑で、早合点してしまうと「省略できると思っていた書類が実は必要だった」という事態が起こる可能性もあります。
この記事では、在留資格の仕組みに詳しくない方でも読み進められるよう、制度の内容をわかりやすく整理しつつ、採用現場で役立つ視点と段取りをお伝えします。
制度の背景を理解しておくと、申請が混み合う時期や、書類不足で審査が遅れやすい理由もつかみやすくなります。
企業側が押さえるべき準備の流れが分かれば、4月採用までの全体像を落ち着いて見通すことができます。
次の章では、実際の採用現場で起こりがちなつまずきや、申請が遅れる典型的なケースについて、もう少し具体的に触れていきます。
申請が詰まりやすい理由と、採用現場で起こりがちなつまずき
留学生を採用しようとすると、企業側が思っている以上に多くの工程が存在します。書類を集めて申請するだけの作業に見えても、実際には学生・学校・企業の三者で情報を揃える必要があり、そのどこかが遅れると一気にスケジュールが崩れます。
とくに4月入社を目指す場合、1月から3月にかけて申請が集中するため、1つの遅れがそのまま審査期間に跳ね返ってしまうことがあります。
遅れの原因は企業側と学生側の双方にある
企業側のよくあるつまずきとしては、次のようなものがあります。
書類の準備を軽く見積もってしまう
在留資格変更には、会社の概要、仕事内容の説明、雇用契約書など、企業が用意する書類が多くあります。これらはテンプレートだけで済むものではなく、仕事内容や受け入れ体制を具体的に示す必要があります。
「すぐ出せるだろう」と思っていた書類が、いざ作ろうとすると意外に手間がかかり、結果として提出が後ろ倒しになることが少なくありません。
面接時の説明と仕事内容がズレている
出入国在留管理庁は、仕事内容と申請する在留資格が合っているかを慎重に確認します。
採用段階では「幅広く仕事に携わってほしい」と説明していても、実際の職務内容が申請資格に適合していなければ、追加資料を求められることがあります。これも審査が長引く原因の1つです。
学生側にもつまずきがあります。
卒業見込みの証明書類が遅れる
特に短大・専門学校では、成績関係の書類が出せるタイミングが学校ごとに異なります。学生本人が「まだ学校から発行されていない」と思い込んでいるケースも多く、企業が催促しないと書類が出揃わないまま時間が過ぎてしまいます。
留学の活動が続く学生は要注意
リーフレットにも記載されているとおり、留学の在留期限が1月31日以前の学生は、その後も授業が続く場合、留学の期間更新が必要になることがあります。
この点を見落として在留資格変更だけ出してしまうと、結果的に申請が受理されなかったり、審査が止まったりします。
年末から1月が勝負になる理由
1月から3月は例年、申請数が膨れ上がるため、審査はどうしても時間がかかります。
その一方で、出入国在留管理庁は12月から1月末の申請を推奨しています。
年内から準備を始めれば、書類不足に気づいたときもリカバリーがしやすく、企業側も学生側も余裕を持ってスケジュールを組めます。
申請の遅れは、採用スケジュールだけでなく現場の体制そのものに影響することがあります。新年度から配置予定だったポジションが空いたままになると、現場の負担が増し、教育係の割り振りもズレてしまいます。
次の章では、12月から始まった新しい書類省略制度を踏まえながら、制度のポイントをやさしく整理していきます。
12月から始まった書類省略制度をやさしく整理する
2025年12月から、留学から就労への在留資格変更に関する新しいルールが加わりました。
特定の条件を満たす場合、提出書類の一部が省略できるという仕組みで、企業の負担を軽くしつつ、審査の効率化も期待されています。
ただし、対象に該当するかどうかの判断は少し複雑で、誤解したまま進めると追加資料を求められてしまうことがあります。
ここでは、難しく感じやすい制度をなるべく噛み砕いて整理していきます。
そもそも何が省略できるのか
今回の制度では、書類が完全になくなるわけではありません。
企業が提出する書類のうち、一部の書類について「この条件に当てはまるなら提出しなくてもよい」という扱いが追加されただけです。
これは、過去に審査の実績がある学生や、学歴などが明確な学生については、審査負担を軽くしても問題がないという考え方が背景にあります。
省略内容については従来のカテゴリー2と同様とされており、企業の規模や受け入れ体制によってはそもそも省略に慣れている企業もありますが、今回の変更で対象となる学生が増えた点が大きなポイントです。
対象となる3つのパターン
制度の中心は次の3つです。
1 国内の大学・大学院・短期大学を卒業(予定)している学生
もっとも利用しやすい条件で、卒業見込みの証明ができれば対象となります。
建設業で採用の多い技術系学生もここに含まれるため、企業にとって使い勝手の良い枠です。
2 海外の「優秀大学」出身の学生
3つの世界大学ランキングのうち、2つ以上で300位以内に入っている大学が対象です。
ランキングという明確な基準があるため、判断が比較的簡単ですが、学生自身が大学のランクを把握していないケースもあります。
この枠を使えそうな学生を採用する場合は、企業側で大学を確認しておくとスムーズです。
3 すでに留学から就労への変更を成功させた外国人を受け入れている企業
少し専門的に見える条件ですが、内容はシンプルです。
同じ企業に、留学から就労へ切り替えた先輩社員がいて、さらにその社員が在留期間更新を一度以上受けている場合、今回の申請でも書類が省略できます。
これは、企業の受け入れ体制に一定の実績があると評価されるためです。
注意したい点
省略制度が便利である一方、次の点には十分注意が必要です。
対象外となる雇用形態がある
派遣形式の雇用は省略の対象外です。
建設業では常用雇用と請負が混在するケースが多いため、学生をどのような雇用形態で採用するのか、早めに整理しておくことが大切です。
省略してよいか迷う書類を「とりあえず省略」するのは危険
審査の状況によっては、結局追加提出を求められることがあります。
省略を理由に必要資料を十分に揃えなかった結果、審査が遅れるという本末転倒な事態も起こりえます。
虚偽の説明は厳しく扱われる
説明書の内容が事実と異なる場合、虚偽申請と判断される可能性があります。
とくに企業側の説明と実際の勤務内容に矛盾があると、審査がストップすることがあります。
新しい制度をうまく活かすには、「誰が対象で、どの書類を省略できるのか」を丁寧に確認することが欠かせません。
ただ制度を知っているだけでは不十分で、採用予定の学生ごとに適用可否を判断する作業が必要です。
次の章では、この新制度を踏まえながら、企業側が今すぐ取り組める準備や段取りを整理していきます。
企業が今すぐ着手できる準備と、在留資格変更を円滑に進めるための段取り
制度が複雑に見える在留資格変更ですが、企業側が早めに準備しておくと、驚くほど進行がスムーズになります。
特に4月採用を予定している場合、年内から1月にかけての行動が大きな分岐点になります。
ここでは、難しい内容をできるだけやさしく、企業が今すぐ取り組める実務的なポイントに落とし込んで整理していきます。
採用が決まったら、最初に企業側が行うべきこと
雇用条件と職務内容を明確にする
在留資格の審査では「どんな仕事をするのか」が最も重要です。
企業が説明する内容と、学生が説明する内容が少しでもズレると、追加資料が必要になることがあります。
業務内容を整理するときは、採用担当・現場責任者・学生の三者で認識が一致しているかを必ず確認しておきましょう。
必要書類の一覧を早めに共有する
学生が提出すべき書類、企業が用意すべき書類、それぞれに期限があります。
書類の遅れはそのまま審査の遅れにつながるため、一覧表にして学生へ渡しておくと安心です。
添付リーフレットにもある通り、書類不足は審査を確実に遅らせます。
書類省略制度を使えるかを早めに判定する
12月から始まった書類省略制度は、対象に当てはまるかどうかを判断するだけでも少し手間がかかります。
しかし、ここを早めに確認しておけば、企業側の負担が大きく変わります。
対象者のチェックリストを作る
企業にとって使いやすいのは、次の3点をまとめたチェックリストです。
- 国内大学・短期大学・大学院の卒業(見込み)か
- 海外大学のランキングが基準に該当するか
- 自社に、留学から就労へ変更して更新を経た社員がいるか
各項目が当てはまるかを採用担当者が早めに把握しておくと、申請の段取りを立てやすくなります。
該当しない場合は「通常の書類準備」を前提に動く
制度を使えないケースもあります。
その場合は、早期申請の重要性がさらに高まります。
特に1月以降は混雑しやすいため、書類省略が利用できないと分かった時点で、通常の準備を前倒しで進めておくことが大切です。
学生との連携を強めることで遅延を防ぐ
時間がかかるのは、企業よりもむしろ学生側の書類です。
卒業見込み証明書や成績証明書など、学校の発行タイミングによっては思いどおりに揃わないことがあります。
学校側の書類発行スケジュールを確認する
学生に任せきりにすると、発行開始日を勘違いしていたり、休日を挟んで遅延することがあります。
「いつから発行できるか」「どこで受け取れるか」を企業側でも確認しておくと、申請の見通しが立てやすくなります。
コミュニケーションの頻度を上げる
学生が初めて経験する手続きであるため、何をどう準備すればよいか分からず、結果的に遅れが生じるケースが多いものです。
週1回でも進捗をチェックするだけで、遅延のリスクは大きく減ります。
2026年4月採用を見据えた最適な申請時期は「2025年12月〜2026年1月」
出入国在留管理庁は、2026年4月1日からの就労を予定する方については、2025年12月1日から2026年1月末までに申請するよう案内しています。
この期間は例年まだ混雑が本格化する前で、必要書類がそろっていれば申請を進めやすい時期です。
2月以降は申請数が一気に増え、審査に時間がかかりやすくなるため、今年の採用スケジュールに合わせて12月〜1月の早めの申請が最も安全な流れといえます。
企業ができる準備は、実は特別なものではありません。
しかし、これらを早めに進めることで、在留資格変更の負担は大幅に軽くなります。
次の章では、ここまでの流れを踏まえつつ、企業が自信を持って採用を進められるよう、全体のまとめと穏やかな行動の後押しを行います。
制度を味方につけて採用を進めるために
ここまで見てきたとおり、留学から就労への在留資格変更は、学生本人と企業の双方で段取りよく進めれば、大きな混乱を防げる手続きです。
とくに今回は、2025年12月から始まった書類省略制度が追い風になる場面も多く、対象に当てはまる学生であれば、提出書類の負担を減らすことができます。
ただし、その恩恵をしっかり受け取るためには、制度の読み違いや「省略できるはず」という思い込みを避け、採用予定者一人ひとりに合わせた慎重な判断が求められます。
企業が最初に意識するべきなのは、今回の案内が2026年4月1日の就労希望者を想定しているという点です。
出入国在留管理庁は、2025年12月1日から2026年1月末までの申請を推奨しています。
この期間を逃すと、2月以降の混雑期に巻き込まれ、審査が長引く可能性が高まります。スケジュール管理は書類そのものより重要といってよいほどです。
制度の読み解きは複雑でも、企業が行うべき行動は意外にシンプルです。
まず、雇用条件と職務内容を明確にし、学生側の書類発行スケジュールを把握し、書類省略の対象に当てはまるかどうかを早めに確認する。
これらの工程を落ち着いて進めるだけで、在留資格変更の成功率は大きく上がります。
一方で、注意したいのは例外的なケースが必ず存在するということです。
書類省略が可能な学生であっても、仕事内容が適切に説明されていなかったり、雇用形態が制度の範囲に入っていなかったりすると、追加資料を求められる場合があります。
制度が緩和されたからといって、確認が雑になってしまうと、かえって審査が遅れることもあります。
在留資格に関する判断は、学生の将来だけでなく、企業の採用計画や現場の体制にも直結します。
そのため、企業の担当者がすべてを抱え込みすぎず、必要に応じて専門家に相談することも大切です。
行政書士として携わっていると、企業側が「もっと早く相談しておけばよかった」と感じる場面は少なくありません。
事前に状況を共有してもらえれば、書類の揃え方や申請時期の調整など、企業の負担を和らげるサポートができます。
最後にお伝えしたいのは、在留資格変更は単なる手続きではなく、企業が採用したい学生を安心して迎えるための準備そのものだということです。
制度を正しく理解して段取りよく進めることで、学生は安心して卒業を迎え、企業は新年度に向けた体制を整えることができます。
今回の制度改正をきっかけに、外国人材の採用をより前向きに、計画的に進める企業が増えていけば、現場の負担を減らし、働きやすい環境づくりにもつながるはずです。
迷うポイントがあれば、遠慮なく相談してください。段取りが見えるだけで、在留資格変更は格段に進めやすくなります。

