道路陥没の44%は排水施設が原因?建設業が今すぐ見直すべき点検と補修のポイント

道路陥没の44%は排水施設が原因?建設業が今すぐ見直すべき点検と補修のポイント

目次

なぜ今、道路排水施設の点検が注目されているのか

生活の足元を支える「見えないインフラ」

普段何気なく通っている道路。
しかし、その足元では、思いがけない危険が静かに進行しています。

国土交通省の調査によると、都道府県が管理する道路で発生した陥没の44.1%が「道路排水施設の損傷」や「老朽化」を原因としていました。

つまり、約2件に1件近くが排水設備の問題に起因しているということです。

道路の下には、雨水を流すための側溝や横断水路、集水枡などが張り巡らされています。

これらは道路構造物の血管とも言える存在ですが、長年の使用で土砂が堆積したり、亀裂や腐食が進行したりすると、空洞化や陥没の引き金になります。

建設業者が見過ごせない新しい国の動き

2025年11月7日、国交省の基本政策部会で「道路排水施設の点検・修繕の強化方針」が示されました。
特に、横断水路や集水枡は陥没深度が大きくなる傾向があることから、優先的な点検対象とされています。

この方針は、単なる行政通達ではありません。
今後、入札・契約・経営事項審査(経審)などにも間接的に影響を及ぼす可能性が高いと見られています。

なぜなら、維持管理の体制整備は「技術力」「社会性等」の評価項目として扱われやすいからです。

「補修よりも、点検の体制づくり」こそが差を生む時代へ

現場では、「壊れたら直す」という対応がまだ一般的です。
しかし今後は、「壊れる前に異常を見つける」「点検データを管理・共有する」といった予防型の維持管理が求められます。

たとえば、

  • 定期点検の実施記録を残す
  • 協力業者と点検マニュアルを共有する
  • 経審・入札時に「維持管理実績」として提示できるように整理する

こうした「地味だけど効果的な取り組み」が、信頼性の高い建設会社としての評価を高めていきます。

実際に起きた道路陥没、その原因の多くは「見えない老朽化」

地下の小さなひび割れが、数トンのトラックを飲み込む

道路陥没と聞くと、地震や大雨のような大きな災害を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、実際には「日常の中で静かに進む老朽化が原因」というケースが圧倒的に多いのです。

たとえば、都道府県が管理する道路では、2019〜2024年度の累計で約6,000件の陥没が発生。
そのうち44.1%(2,690件)が道路排水施設の損傷に起因していました。
一見、何の変哲もない道路の下で、側溝や横断水路の劣化、集水枡の破損、土砂の堆積が進行し、
「目に見えない空洞」が徐々に広がっていた――という構図です。

側溝・横断水路・集水枡…どこが最も危ない?

排水施設の中でも、横断水路や集水枡は特にリスクが高いと指摘されています。
その理由は、構造上「深さがある」「流量の変動が大きい」「点検が難しい」からです。

  • 側溝
    比較的浅く、目視点検や清掃がしやすい
  • 横断水路
    車道下を横断しており、損傷すると陥没が深くなりやすい
  • 集水枡
    落ち葉や泥がたまりやすく、詰まりや腐食の温床になる

とくに都市部では、道路下にガス・水道・通信ケーブルなどの占用物件も集中しています。
このため、「どこが原因か分からない」まま工期が延びるケースも少なくありません。
結果として、補修費だけでなく交通規制・周辺工事・補償対応まで含めた損失が膨らむ構造です。

陥没が起きるとどうなる?損害と対応コスト

もし道路が陥没すれば、被害は1か所にとどまりません。

  1. 交通障害・通行止め
    緊急対応で道路が封鎖され、地域全体の物流にも影響が出る。
  2. 社会的信用の低下
    元請・自治体・下請のいずれも責任範囲の確認に追われ、事業者の信用が揺らぐ。
  3. 補修・調査費用の増大
    原因特定のための空洞調査や再舗装、ライフライン復旧費用が重なる。

これらの費用は1件あたり数百万円規模に達することも珍しくなく、「予防的な点検に回すべきだった」と後悔する声が、現場からも多く聞かれます。

現場から見える見落としの連鎖

点検・清掃を担当する現場では、次のような盲点が繰り返されています。

  • 「目視で問題なし」と判断したが、内部腐食が進んでいた
  • 図面と現況が一致せず、実際の排水ルートが把握できていなかった
  • 占用業者との情報共有がなく、重複掘削や補修ミスが発生した

こうした見落としは、結果的に施工業者・管理者・占用事業者の三者が疲弊する構造を生みます。
国交省が求める「連携による点検・情報共有体制の強化」は、まさにこの現場の実情を踏まえたものです。

国交省が打ち出した「点検・修繕の強化方針」とは

目指すのは「壊れる前に気づける仕組み」への転換

国土交通省が11月7日に発表した方針の中心は、道路排水施設の点検と修繕体制を抜本的に見直すというものです。

従来は「路面に異常が出たら補修」という事後対応型が一般的でしたが、今後は事前の劣化検知とデータ管理の強化が重視されます。

つまり、

「見えないところを、見える化する」

これが今回の制度方針の根幹です。

側溝・横断水路・集水枡の重点点検

今回、国交省が特に問題視したのは、横断水路と集水枡です。
これらは道路陥没の原因として「深刻な損害を引き起こすケースが多い」とされ、優先的な点検対象に指定されています。

【重点対象例】

  • 横断水路
    車道下を横断する構造。土砂流入・継ぎ目の劣化で空洞化しやすい。
  • 集水枡
    ゴミや泥の堆積で詰まりや腐食が起き、雨水の排出能力が低下。

国交省は、これらの点検において「定期的な内部カメラ調査や路面下空洞調査の導入」を推奨しています。
従来の目視中心の確認だけでは限界があり、計測技術とデジタル管理の導入が鍵になるとされています。

占用事業者との連携体制の強化

都市部の道路下には、ガス管・下水道・通信管などの占用物件が集中しています。
一方で、道路管理者(自治体)と占用事業者(インフラ企業など)の情報共有が十分でないという課題がありました。

国交省はこれを受けて、

「道路管理者が実施してきた調査を、占用事業者と連携して進めることが有効」

と明記。

具体的には、次のような連携が推奨されています。

  • 道路下空洞調査の結果を自治体と事業者間で共有する
  • 路面変状調査をパトロール車で共同実施する
  • 異常検知時に迅速な原因特定会議を開催する

これにより、責任の所在が曖昧なまま工期が延びるといった従来の問題を減らす狙いがあります。

竣工図面・位置情報の提出義務化へ?

もう一つ大きな焦点が、竣工図面のデータ提出の義務化です。

現在の道路法では、道路占用工事を行う事業者は「工事内容・構造」を届け出る義務がありますが、
設置後の維持管理状況の報告義務はないのが現状です。

そのため、

  • 工事後に竣工図面が提出されない
  • 図面が紙ベースのままで位置情報が共有されない
  • 実際の配管ルートがわからず、別工事で誤って掘削してしまう

といった情報断絶が各地で発生していました。

これを防ぐため、国交省は今後、

「位置情報を含む竣工図面のデータ提出を制度化する必要がある」

としています。

つまり、施工後も情報が生き続ける道路管理を実現するための改革が動き始めています。

建設業者にとってのチャンス

こうした動きは、「大手企業向けの制度」と思われがちですが、実は中小建設業者にこそチャンスがあります。

自治体や占用事業者は、現場での点検・調査・補修を担える協力業者を求めており、「定期点検の体制」「報告書作成スキル」「データ管理力」を備えた会社は新しい仕事の受け皿になりやすいのです。

今日からできる!建設業者が取るべき具体的な3つの行動

1. 点検と補修をセットで考える

多くの事業者が「補修=仕事」「点検=コスト」と捉えがちですが、これからは逆です。
点検を仕組み化できる会社こそ、長期的な受注と信頼を得る会社になります。

道路排水施設の点検では、単に異常を見つけるだけでなく、点検記録を定期的に残すことが重要です。
点検と補修を切り離さず、

「点検→軽微補修→報告→次回点検」というサイクルを自社内で確立することが理想です。

この体制が整えば、自治体や元請からの「小規模維持契約」などの依頼も受けやすくなります。
とくに、経審の「社会性等」や「技術力」評価では、こうした維持管理体制がプラス評価される可能性が高まります。

2. 報告書の書き方を見られる前提で整える

点検を行っても、報告書の質が低ければ信頼は積み上がりません。
国交省が推奨する方向性は「データの共有・再利用が前提の報告書」です。

現場で意識すべきポイントは次の3つ。

  • 写真の撮影位置と角度を統一
    同じ箇所の変化を時系列で比較できるように。
  • 図面との照合を前提に記録
    位置情報(座標・距離)を簡易的にでもメモしておく。
  • 定型フォーマットで出力できる形にする
    Word・ExcelよりもCSV・クラウド共有形式が理想。

たとえば、排水枡の点検結果をExcelで一覧化し、劣化状況を「A(異常なし)〜C(要補修)」などランクで整理するだけでも、自治体・元請への提出資料として即使えるレベルになります。

こうした報告書の蓄積は、後述する「経審・補助金申請時のエビデンス資料」としても活用できます。

3. 「維持管理力」を見える化して経審や補助金に活かす

経営事項審査(経審)では、「社会性等」や「技術力」の項目で、維持管理・点検業務の実績が評価対象となる場合があります。

また、近年の各種補助金(例:事業継続力強化計画・地域建設業経営強化補助金など)でも、「点検・維持管理のデジタル化」「地域インフラの安全管理への貢献」といった要素が加点や採択理由に反映される傾向があります。

したがって、

  • 自社で行った点検・補修の件数や内容を一覧化
  • 使用機材や点検手法を写真付きでまとめる
  • 地域貢献的な活動(学校周辺・通学路点検など)も含めて報告

これらを「自社の維持管理力ポートフォリオ」として整備しておくと、入札・補助金・経審のあらゆる場面で活用できます。

さらに、行政書士など専門職と連携して、「維持管理記録を活かした経審点数アップ・補助金申請支援」を受けることも効果的です。

一歩先を行く企業は「データ化」と「チーム化」に動いている

最近では、タブレットやスマホアプリで点検記録を入力し、クラウドで共有する取り組みを始めた中小企業も増えています。

特に注目されているのが、

  • GoogleフォームやChatPlus等を活用した社内点検入力フォーム
  • NotebookLMやAIツールによる報告書作成の自動化

といった低コストで導入できるデジタル連携です。
こうした工夫で、「報告書の統一」「担当者間の引き継ぎ」「外部業者との情報共有」がスムーズになります。

インフラを守ることは、地域を守ること

点検・補修は経営の防災

道路陥没の44%が排水施設に起因する――。
この数字は、単なる技術的な問題ではなく、地域の安全と企業の信頼を左右する経営課題を示しています。

建設業は「壊れたものを直す仕事」から、「壊れないように支える仕事」へと変化しています。
それは、防災の概念を経営に取り込むことでもあります。

点検・補修を定期化することは、自社の損失を防ぐ経営の防災であり、地域の安全を守る社会的使命でもある。

今後は、国や自治体が進める制度改正に呼応する形で、点検体制を整えた企業が信頼と発注を得る時代になっていきます。

行政・地域との信頼関係を築く力

道路や排水施設の点検・補修は、現場でしか分からない異常を拾い上げられる立場にあるからこそ、自治体・占用事業者・住民との橋渡し役を果たせます。

とくに市区町村では、「点検は業者任せ」「報告書は保管だけ」となっているケースも多く、報告を提案できる現場パートナーの存在が求められています。

小さな報告書でも、

  • 状況写真に「発生日」「原因推定」「対処案」を添える
  • 清掃や補修を行った日時・担当者名を記録
    といった丁寧な対応が積み重なれば、行政や元請からの信頼が格段に高まります。

結果として、次の工事・新しい案件につながることも少なくありません。

小さな取り組みが次の受注につながる

たとえば、

  • 「雨のたびに冠水していた通学路の集水枡を改善した」
  • 「自治体に自主点検の報告書を提出し、継続契約に発展した」
  • 「古い図面をデジタル化して共有し、占用事業者から感謝された」

こうした小さな取り組みが、地域メディアに紹介されたり、公共事業の実績欄に加点されたりするケースもあります。

点検の見える化=信頼の見える化」という構図が整理し、その積み重ねが、次の受注・補助金・提携先との関係強化へとつながっていくのです。

制度を味方に、現場から信頼を積み上げよう

道路排水施設の点検強化は、一見すると行政主導の動きですが、その本質は「現場をよく知る人の声を制度に取り込む」ことにあります。

だからこそ、現場の建設業者が声を上げ、データを残し、仕組みを整えることが社会全体の信頼基盤をつくります。

行政書士としても、

  • 点検報告書や体制整備を経審資料へ反映する支援
  • 維持管理をテーマにした補助金申請サポート
  • 協力業者契約や業務提携書の文書整備

といった形で、現場と制度の間をつなぐお手伝いが可能です。

行動を起こすあなたへ

最後に伝えたいのは、

「完璧に整えてから始める」のではなく、「まず1枚の点検記録から始める」ことが大切だということ。

今日からできる小さな行動が、会社の信頼を守り、地域を守り、未来の受注につながります。

道路を支えることは、地域を支えること。
そして、地域を支えることが、建設業の最大の使命です。