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値上げ交渉は“元請だけの話”じゃない
「最近、材料費がまた上がってるけど、うちみたいな下請けにはどうしようもないよ…」
市川市内のあるリフォーム業者の社長が、そんな声を漏らしていました。
確かに、ここ数年で資材価格は大きく変動し続けています。鉄筋、コンクリート、電線、ビス、どれもジワジワと値を上げ、気づけば利益がほとんど残らない…そんな“見積もり負け”が当たり前になっていませんか?
でも、本当に「どうしようもない」のでしょうか。
実は2025年6月、国土交通省が建設工事標準請負契約約款の見直しを発表しました。ポイントは、「請負代金の変更方法を契約書に明記すること」。つまり、“変更交渉を前提とした契約づくり”が、制度として認められる時代になったのです。
これまで「下請けの立場じゃ言いづらい」「契約だから仕方ない」とあきらめていたことが、少しずつ変わり始めています。
もちろん、それを味方につけるには、“制度の理解”と“実際の進め方”が必要です。
このブログでは、市川市を拠点に建設業を支援している実務者の視点から、
「価格交渉の新ルール」と、「地域の中小事業者が使える支援策」を、わかりやすくご紹介していきます。
黙っていたら赤字まっしぐら?市川の現場で起きた“契約の盲点”
「最初の見積もりから材料費が2割も上がった。でも、もう契約しちゃってるから…」
市川市で設備工事を請け負うB社は、最近、あるビルの改修工事でこんな事態に直面しました。契約当初の単価で受けたにもかかわらず、着工前に銅管や電線の価格が急上昇。原価が膨らみ、利益どころか赤字のリスクが現実になりかけました。
実はこのような話、市川に限らず、中小の下請け業者では“日常茶飯事”になっています。
なぜこうした事態が起きるのか。それは多くの場合、「契約書に“価格変更の条項”がない」からです。
また、たとえ約款があったとしても、
- 書類が古く現行法に沿っていない
- 元請が作った雛形を“そのまま”使っている
- 「価格交渉できる」と知っていても、“どう切り出せばいいかわからない”
という声が、ヒアリングでもよく聞かれます。
とくに市川市のような地域では、地元の取引先との関係性を重んじるあまり、価格変更の話を切り出しづらい空気もあります。
でも――本当に、そのままでいいんでしょうか?
利益を守るのは経営の責任です。材料費が上がったとき、「交渉できる余地がある」という選択肢を持っているだけでも、事業の継続力は大きく変わってきます。
次章では、6月に示された標準約款の改正ポイントをわかりやすく整理し、実際にどう動くべきかのヒントを掘り下げていきます。
変わる標準約款、「価格交渉は当然」の時代へ
2025年6月、国土交通省は「建設工事標準請負契約約款」の改正方針を発表しました。
特に注目すべきは、資材価格の高騰に対応して、請負代金の変更方法を契約に明記することが義務化された点です。
これ、実は地味に聞こえて、ものすごく大きな変化です。
「価格変更できる契約」に
これまで、多くの契約書には「価格変更」について曖昧な記載しかなく、実務上は「元請の裁量」に任されることが多くありました。しかし、今回の改正では、
- 資材価格に著しい変動があった場合
- 受注者(下請け含む)が価格変更を請求できる
- その金額は、協議で決める
- 交渉経緯など“その他の事情”も加味して判断
と、具体的な条件と対応が示されました。
つまり、「急な価格変動でも、交渉していいんです」と、制度が後押ししてくれるようになったわけです。
誠実な対応も“努力義務”に
また、契約前には元請が「価格に影響しそうなリスク情報」を開示する義務が加わりました。加えて、交渉が発生した場合、注文者側には「誠実に応じる努力義務」も課されます。
これにより、「価格変更はタブー」という空気は薄れつつあり、契約後も柔軟に話し合える土壌が整いはじめているのです。
「コミットメント条項」で技能者の賃金も明示
今回の改正ではさらに、技能者に適正な賃金を払っているかを示す「コミットメント条項」も任意で契約書に盛り込めるようになります。これは賃金や労務費を透明化し、末端の現場まで利益が行き渡る仕組みを目指すものです。
市川市の中小事業者にとっては、こうした制度改正は「弱い立場だから仕方ない」からの脱却につながるチャンスです。
では、制度を理解したうえで、実際にはどう動くべきか。次章では、現場で使える具体的な行動案をご紹介します。
「契約交渉」ができる下請けになるために、今すぐできる3つのこと
制度が変わったとはいえ、「じゃあ、どうやって交渉するの?」というのが一番の悩みどころですよね。
市川市の現場で実際に使える、“明日からの一歩”を3つご紹介します。
① 契約書は「もらって終わり」じゃない。変更条項の確認を習慣に
まず最初にすべきことは、「契約書の内容を読む」こと。特に、以下のポイントを確認してください。
- 価格変更に関する条項があるか?
- 価格変動時の協議や通知義務の文言はあるか?
- 相手側に“誠実な協議”の努力義務があるか?
市川市の地場工務店や設備業者では、契約書は「元請からの指示書感覚で見ている」ケースが多いですが、これは危険です。約款が新しいかどうかも重要なチェック項目です。
② 「言いづらい」を越える“交渉の型”を持つ
「こんなこと言ったら嫌がられるかも…」
そう思うのは当然ですが、交渉にも“型”があります。たとえば、
「すみません、価格の件ですが、最近の仕入れ値が○%ほど上がっておりまして…」
「こちら、標準約款で協議の対象になるとされているケースに該当すると思いますので…」
というように、制度に基づいて淡々と説明するスタイルが効果的です。
交渉の場で重要なのは、「自分の立場」ではなく、「制度や事実」に基づいた話をすること。
市川商工会や地域の士業ネットワークでも、こうした交渉型トークの勉強会が今後注目されるでしょう。
③ 「一人で悩まない」、実務支援を味方につける
特に初めて交渉する方は、専門家のアドバイスが非常に心強いです。
例えば、市川市内の建設業に詳しい行政書士や経営コンサルタントは、契約内容の確認から交渉書面の添削まで対応可能です。
また、経営事項審査や資金調達との連携も見越したアドバイスを受けることで、“単なる交渉”から“経営改善”へつなげることも可能です。
市川のような“地縁・信頼ベース”の関係が強い地域だからこそ、感情的なぶつかりを避けながら、制度を盾に丁寧に話を進める――それが今後の建設業の交渉スタイルとなるはずです。
価格交渉は「守り」ではなく、「未来を切り拓く行動」です
ここまで読み進めてくださったあなたなら、すでにお気づきかもしれません。
価格交渉は「わがまま」ではなく、建設業を守るために必要な行動です。
材料費や人件費が上がるなか、今まで通りの契約で仕事を請け負い続ければ、
最前線の現場が疲弊していくのは時間の問題です。
でも、新しい標準約款が示すように、今の時代は違います。
交渉の余地がある、制度がそう言ってくれている。
これは、これまで声を上げづらかった地域の中小建設業者にとって、大きな追い風です。
迷ったら、最初の一歩だけ踏み出そう
- 「契約書の条項をチェックする」
- 「今後の交渉に備えて情報を集める」
- 「専門家に相談してみる」
こうした一歩は、たとえ小さくても、確実に未来を変える力を持っています。
とくに市川市のように、地元との信頼が深い地域では、“言い方”や“進め方”の工夫が成果に直結します。
あなたの“現場の声”が、業界を変える
本記事を執筆している私は、元自衛官として数々の復興現場に立ち、
現在は市川市で、建設業者の実務支援に取り組んでいる行政書士です。
現場の大変さを知っているからこそ、制度と経営をつなぐ“橋渡し役”として、
皆さんの悩みに具体的な形で応えていきたいと考えています。
建設業の未来は、現場を支える一人ひとりの行動で変わっていきます。
このブログが、あなたの“前に進む一歩”になることを願っています。