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その「焦り」、痛いほどわかります
「先生、大変なことになりました!うちの専任技術者が、急に辞めるって言い出したんです…」
電話越しに聞こえる経営者さまの、震えるような声。行政書士として活動していると、こうしたご相談をいただく機会も少なからずあります。
特に最近は、人手不足の影響もあって「引き抜き」や「突然の退職代行」なんてケースも増えていますよね。
「明日から許可はどうなるの?」
「今受けている工事は途中で止まってしまう?」
「もしバレたら、もう二度と建設業ができなくなるんじゃ……」
真っ先にそんな不安が頭をよぎるはずです。でも、まずは一度、深呼吸しましょう。 確かに専任技術者(以下、専技)の不在は、建設業許可という「看板」を維持する上での大ピンチです。ですが、落ち着いてステップを踏めば、道は必ず開けます。
この記事では、専技がいきなり辞めてしまったときに「まず何をすべきか」を、2026年現在の最新事情を踏まえて、わかりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、あなたが今日やるべきことが明確になっているはずです。
そもそも、なぜ専任技術者が辞めると「マズイ」のか?
一般的なイメージでは、「現場に詳しい人がいなくなるから困る」という実務的な問題だと思われがちですが、法律的にはもっと深刻です。
建設業許可を維持するためには、大きく分けて2つの「柱」が必要です。
- 建設業のプロ経営者
→経営業務の管理責任者(経管) - 現場を統括する技術者
→専任技術者(専技)
この2人が常に事務所に「専任」でいなければならない、というのが許可の絶対条件。つまり、専技が不在になった瞬間、その会社は許可の要件を満たさなくなってしまうというワケ。
もし不在のまま放置し、行政庁から許可取消し処分を受けたら、その後の新規工事請負は「無許可営業」とみなされるリスクがあります。
2026年現在は、行政のDX化(デジタル化)が進み、社会保険の加入状況やマイナンバーを通じた情報の紐付けが以前よりもずっとスムーズに行われています。
「黙っていればバレないだろう」という考えは、今の時代、非常に危険です。むしろ、正直に素早く動くことこそが、会社を守る唯一の手段なんです。
【重要】まず最初にやるべき3つのこと
パニックになっている暇はありません。スマホを置いて、あるいはこの画面を見ながら、次の3つを順番に確認してください。
1. 後任候補の「資格」と「常勤性」を即座に確認する
まずは社内に代わりが務まる人がいないか、徹底的に洗い出しましょう。意外な人がお宝のような資格を持っていることもあります。
- 国家資格の有無
1級・2級の施工管理技士、建築士、技能検定など、対象となる資格を持っている人はいないか? - 「常勤」であること
専任技術者は「その事務所に常駐」していなければなりません。他社で社会保険に入っている人はNGです。 - 役員でもOK
社長ご自身や、他の役員さんが資格を持っていれば、その方が専任技術者を兼ねることも可能です。
2026年現在、専任技術者の常勤性については建設業許可事務ガイドラインでテレワークが一定条件(ICT活用・常時連絡可能等)で認められていますが、基本は営業所常駐が原則です。
まずは手元の名簿や履歴書をひっくり返して確認しましょう。
2. 「変更があった日から14日以内」の期限をカレンダーに記入
建設業法第11条第2項で、専任技術者変更は「変更があった日から14日以内」に変更届提出が原則です。
土日含むカレンダー日で、超過時は10万円以下の過料リスクがありますが、数日遅れなら遅延理由書添付で受理される場合も。後任確保を急ぎ許可継続を図りましょう。
まずはカレンダーを見て、専技の退職日から14日目がいつになるのか、大きく赤丸をつけてください。
3. 許可行政庁(または行政書士)への早めの事前相談
「後任が見つからないから、14日以内に届け出なんて出せないよ……」
そんなときこそ、早めに専門家や管轄の土木事務所へ連絡してください。
状況整理後、「後任を探中、この状況です」と相談を。いきなり書類提出せず、アドバイスを得て取消しリスクを最小化しましょう。ただし、あくまで行政側に裁量があることをお忘れなく。
意外な落とし穴!「実務経験10年」で証明する場合の注意点
「資格を持っている人がいないけれど、10年以上この仕事をやっているベテランならいる!」 そう思って安心するのは、まだ少し早いです。実は、実務経験で専技になるのは、資格でなるよりも何倍もハードルが高いんです。
- 証明書類の壁
過去10年分の「注文書」や「請求書+通帳の写し」などが、1年に1件ずつ(あるいは月単位で)必要になります。 - 社会保険の履歴
その10年間、ちゃんとその会社で働いていたことを証明する年金事務所の書類もセットで求められます。 - 学科の緩和
指定学科(建築学、土木工学など)を卒業していれば、実務経験が5年や3年に短縮される特例もありますが、その「卒業証明書」を取り寄せるだけでも数日かかりますよね。
特に、2026年現在は書類の偽造や不適切な証明に対して審査が非常に厳しくなっています。
「なんとなく10年やってるから大丈夫」という甘い見通しで挑むと、審査の途中で跳ね返され、その間に14日の期限が過ぎてしまう……なんて悲劇も起こり得ます。
【事例で解説】ピンチをチャンスに変えたリカバリーの「典型パターン」
「もう看板を下ろすしかないのか……」と絶望的な気持ちになっている経営者さまもいらっしゃるかもしれませんが、道は一つではありません。
ここでは、実務の現場でよく見られる「危機回避のシナリオ」を2つピックアップしました。ご自身の状況に近いものがないか、解決のヒントを探ってみてください。
【パターン1】社長の「引き出し」に眠っていた資格が救世主に
専任技術者だった従業員さんが急に辞めてしまい、「社内にはもう他に資格者はいない」と思い込んでいたケース。 ところが、改めてじっくりお話を伺ってみると、社長ご自身が20年以上前に「取らされただけだから、もう有効じゃないと思っていた」という資格(2級建築施工管理技士など)をお持ちだった……という展開は、実は意外なほど「あるある」なんです。
この場合、手元に合格証書がなくても、大急ぎで「合格証明書」の再発行手続きをかければ、その資格を根拠に専任技術者を社長に切り替えることができます。
スライディング気味ではありますが、14日という期限内に届け出を済ませることで、許可を一本も切らさずに守り抜くことができる、最も理想的なリカバリーの形です。
【パターン2】あえて「戦略的な届出」を行い、数ヶ月で復活
どうしても後任がすぐに見つからず、実務経験を証明するための古い書類(10年分)もすぐには揃わない……というケースも少なくありません。ここで一番やってはいけないのが、焦って虚偽の報告をしてしまうこと。もし発覚すれば、以後5年間は許可が取れなくなるという、再起不能なダメージを負ってしまいます。
そんな時に検討したいのが、あえて一度「専任技術者の欠如」を理由に廃業届を出す、という戦略です。
一旦は「無許可」の状態にはなりますが、その間に腰を据えて新たな有資格者を正社員として採用。体制を整えた上で、数ヶ月後に改めて「新規」で許可を取り直します。一時的に看板は外れますが、行政に対して誠実に対応した事実は残ります。
元請け企業に対しても「コンプライアンスを最優先し、適法に再取得しました」と堂々と説明できるため、長期的な信頼を守ることができるワケです。
2026年現在の法令トレンド!技術者不足への「緩和」と「厳格化」
2026年現在、建設業界を取り巻く環境は大きく変わっています。
まず、「緩和」の側面。2024年12月改正で監理技術者・営業所技術者の現場兼務要件が緩和(1億円未満工事等)。専任技術者のテレワークはガイドラインで一定条件認められていますが、中小企業の実務適用は限定的です。
一方で、「厳格化」は進んでいます。「名義貸し」は許可取消し・3年以下の懲役または300万円以下の罰金と重罰。マイナンバー等で常勤性確認が厳格化。
また、コンプライアンス(法令遵守)を重視する元請け企業は、下請け企業の専技が「本当にそこにいるか」を厳しくチェックするようになっています。「バレなきゃいい」という時代は、完全に終わったと言えるでしょう。
一人で抱え込まず、次の「一手」を一緒に打ちましょう
専任技術者の退職は、確かに大きな試練です。でも、これを機に「特定の個人に頼りすぎない体制」を整えたり、社長ご自身が資格取得に動いたり、会社がより強く生まれ変わるきっかけにすることもできるんです。
一番やってはいけないのは、「怖くなって、黙って放置すること」。 これだけは、あなたの会社の未来を奪ってしまいます。
「うちの会社の場合はどうなるの?」
「この資格で代わりになれる?」
「証明書類、これで足りてるかな……」
そんな具体的な不安がある方は、ぜひ一度、当事務所へお声がけください。
- 一般的なお問い合わせ・ご質問
無料で承ります。まずは「何がわからないか」を整理しましょう。 - 「うちの場合は」という具体的な本気のご相談
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