目次
第1章 まず落ち着いて全体像をつかむ
元請けから突然言われて戸惑うのは珍しくない
「元請けに建設業許可取れって言われたんだけど、どうしたらいい…」
こう思いながら、このページにたどり着いた方は少なくありません。
実際、この相談はかなり多いです。
今まで特に問題なく仕事が回っていたのに、ある日突然こんな話が出る。しかも元請けは、わりと淡々と伝えてくることが多い。聞いた側としては、頭の中が一気に忙しくなりますよね。
- そもそもウチ対象なのか
- どれくらい時間がかかるのか
- 今から動いて間に合うのか
- そもそも何から始めればいいのか
こうした疑問が一気に浮かぶのは、ごく自然なことです。
後回しにした場合に起きやすいこと
この話が出たとき、忙しさもあって、少し様子を見ようと考える方もいます。
実際、すぐに結論が出ないケースもあります。
ただ、現場を見ていると、後回しにしたことで調整が難しくなる例も少なくありません。
例えば、
・次の現場に入れなくなった
・見積の声がかかりにくくなった
・継続案件が一時ストップした
・資金繰りに影響が出た
といった形です。
元請けが許可を気にする背景には、社内ルールの変更や監査対応などがあります。そのため、一度基準が決まると、個別に緩めるのは簡単ではありません。
だからこそ、「いつか考えよう」よりも、「一度整理してみよう」という姿勢の方が、結果的にラクになることが多いです。
よくある思い込みと注意点
急に話が出ると、いろいろな情報をかき集めたくなります。その中で、少し誤解されやすいポイントもあります。
例えば、
- 名義を借りれば何とかなるのでは
- 500万円未満に分ければ大丈夫なのでは
- 書類を出せばすぐ終わるのでは
こうした考え方は、現場でもよく耳にします。
ただ、あとから手続きや更新、経営事項審査などの場面で整理が必要になるケースも多く、結果的に遠回りになることがあります。
急いでいるときほど、いったん立ち止まって確認した方がスムーズに進むことが多い、というのが実務の実感です。
この記事で整理できること
この記事では、元請けから許可の話が出たときに、何をどんな順番で確認すればよいかを、できるだけ分かりやすくまとめています。
主に、次の3つを整理していきます。
- 1つ目
建設業許可が必要になる場面と、許可がないことでどんな影響が出やすいか。 - 2つ目
許可の要件である、経営業務の管理責任者、営業所技術者、財産的基礎について、専門用語をなるべくかみ砕いて説明します。 - 3つ目
実際に動くときの確認ポイントや準備の流れです。元請けへの説明の仕方や、スケジュール感についても触れます。
建設業許可は、調べ始めると情報が多くて混乱しやすい分野です。
この記事では、現場で忙しい方でも全体像がつかめるように、必要な部分に絞って整理しています。
次章では、実際の現場でよくあるパターンや、つまずきやすい場面を具体的に見ていきます。
第2章 現場でよくある状況を先に整理しておく
よくあるのは、期限つきで話が降ってくるパターン
元請けから許可の話が出るとき、けっこうな割合で期限がセットになっています。
- 来月から基準が変わる
- 次の案件からは許可が必要
- 取引先のチェックが厳しくなった
こんな感じです。
言われた側としては、準備の時間が十分に取れないまま、判断だけ先に求められる。ここがしんどいところですよね。
ただ、元請けが急に気分で言い出したというより、元請け側の事情が変わっているケースが多いです。監査対応やコンプライアンスの強化、取引先管理の厳格化など、会社としてルールを揃えにいっている流れです。
だから「うちは昔からの付き合いだから大丈夫でしょ」と思っていると、あるタイミングでスパッと線を引かれることがあります。昔からの付き合いほど、突然の切り替えが起きやすい、というのも現場あるあるです。
勘違いしやすいポイントは、だいたい似ている
焦って情報を集めると、断片的な情報だけ先に入ってしまうことがあります。現場でよく見る、つまずきポイントを先に挙げます。
書類さえ出せばすぐ許可が出ると思ってしまう
申請書を作るだけなら、実はそこまで難しくありません。大変なのは、その前の確認と証明資料です。
- 経営業務の管理責任者(経管)は誰で、どう証明するか
- 営業所技術者(旧専任技術者)は誰で、どの業種に当てるのか
- 過去の工事実績や、経験年数の説明はどう組むか
ここが固まらないと、申請書を作っても前に進みにくいです。
さらに、決算変更届を長く出していない、役員歴や会社の沿革が複雑、といった事情があると、準備の工数が増えます。ここは、先に分かっているだけで気持ちがだいぶラクになります。
500万円ラインを何となくで理解している
建設業許可の話になると必ず出てくるのが、1件500万円以上の工事です。
ただ、この部分は細かい論点が多く、何となくで理解してしまうと元請けとの会話が噛み合わなくなりがちです。
- 税込か税抜か
- 材料込みか別か
- 途中で追加工事が出たらどう扱うか
- 契約を分けても実態が一体ならどう考えるか
元請けが許可を求める場面では、こうした論点を突っ込んで議論するより、そもそも許可がある状態に寄せたい、という心理が働きます。だから、500万円未満に調整できるかどうかだけで乗り切ろうとすると、思ったより通らないことがあります。
名義で乗り切れると考えてしまう
急いでいると、誰かの名義や資格を借りれば何とかなるのでは、と考えてしまう方もいます。気持ちは分かります。
でも、ここは後でトラブルになりやすいので、最初から避けておきたいポイントです。
許可は取った瞬間だけではなく、その後も維持が必要です。更新、決算変更届、経営事項審査(経審)など、いずれ必ず次の手続きが来ます。そこで整合が取れなくなると、元請けからまた同じ話が戻ってきます。
許可取得はゴールというより、取引の土台づくりに近い。そう捉えると判断しやすくなります。
元請けが許可を求める理由を知ると、話が早くなる
元請けが建設業許可を気にする理由は、ざっくり言うと次の3つにまとまります。
・法令順守を社内外に説明しやすくするため
・取引先管理(与信、反社チェック、下請管理)を一律にするため
・事故やトラブルが起きたときの責任リスクを下げるため
要するに、元請けは現場の都合というより、会社としての守りを固めています。
この背景を押さえておくと、元請けへの伝え方も変わってきます。感情的に反論するより、現実的なスケジュールと方針を伝えた方が、話が進みやすいからです。
例えば、
・許可が必要かどうか、まず要件を確認している
・経管と技術者の当たりを付けて、必要資料を洗い出している
・申請までの見込み時期を、目安として伝えられる状態にする
こうした情報が整理できると、元請け側も社内説明がしやすくなります。結果として、取引の調整もしやすくなります。
次章では、建設業許可の制度を、初心者の方でも全体像がつかめるように整理します。経管、営業所技術者、財産的基礎という3つの要点を、現場感とつなげながら説明していきます。
第3章 制度をざっくり理解して、ムダな手戻りを減らす
そもそも建設業許可が必要になる場面
元請けに言われたとき、最初に整理したいのは「うちは本当に許可が必要なのか」です。
ここが曖昧だと、元請けとの会話も、社内での段取りも、ずっとモヤモヤしたままになりやすいです。
建設業許可が関係してくるのは、ざっくり言えば次の場面です。
・請負金額が一定以上になる工事を受ける
・元請けの取引基準として、許可の有無が条件になっている
・公共工事や入札を見据えて、経営事項審査(経審)まで求められる
最初のきっかけは「元請けに言われた」でも、そこから先の要請が連鎖することが多いのが現場です。
1件500万円以上の工事とは
よく出てくるのが「500万円」という数字です。
建設業許可が必要かどうかを考えるときの、ひとつの目安になっています。
ただ、ここは細部で判断が変わることもあるので、まずは大枠だけ押さえます。
・原則として、1件の工事が500万円以上になると許可が必要になりやすい
・建築一式工事は基準が異なり、1,500万円以上または延べ面積150㎡以上の木造住宅などが目安になる
金額の考え方は、契約の仕方や工事の実態によって論点が出ます。追加工事が出た場合や、契約を分けた場合など、現場では判断に迷う場面も多いです。
ただ、元請けに許可を求められている状況では、金額の線引きでギリギリを攻めるより、許可がある状態に寄せていく方が話が早いケースが多いです。元請けが欲しいのは、説明しやすい状態だからです。
許可がないと出来ないことが増える理由
許可がないと即アウト、というより、取引の選択肢が減っていくイメージです。
・元請けの協力会社登録から外れる
・発注の優先順位が下がる
・公共寄りの案件で呼ばれにくくなる
・金融機関の見え方にも影響することがある
そして地味に効いてくるのが「説明コスト」です。
許可がない状態だと、毎回、元請けに状況説明が必要になり、社内の稟議や監査の場面で止まりやすくなります。元請け側としては、そこに時間をかけたくない。だから許可を求める、という流れです。
許可の3要件をざっくり理解する
ここからが本題です。
建設業許可は、細かい要件が色々ありますが、まずは3つに分けて考えると混乱が減ります。
・経営業務の管理責任者(経管)
・営業所技術者(旧専任技術者)
・財産的基礎
この3つが「そろっているか」「証明できるか」が肝です。
経営業務の管理責任者(経管)
ざっくり言うと、建設業の経営を一定期間経験してきた人がいるか、という要件です。
ここでのポイントは、経験があるだけでは足りず、「経験を説明できる形に落とす」必要があるところです。
よくある候補は、
・代表者本人
・役員
・以前の会社で経営に近い立場だった人
ただ、役員歴や会社の沿革が絡むと、説明の組み立てが必要になります。例えば、個人事業から法人成りした場合、途中で社名や役員が変わっている場合など、単純に年数だけ見ても判断できないことがあります。
元請けに急かされていると、ここが一番時間を食いやすいです。
なので、まずは「誰を経管候補にするか」を決めて、その人の経歴を時系列で整理するところから始めると進みやすいです。
営業所技術者(旧専任技術者)
こちらは、業種ごとに必要になる技術者の要件です。
最近は呼び方が「営業所技術者」に変わったので、情報を調べるときに混乱しやすいポイントでもあります。
営業所技術者は、基本的に次のどちらかで考えます。
・資格で満たす
・実務経験で満たす
電気工事、管工事、内装仕上工事、とび・土工、解体など、会社の工事内容に合った業種を選び、その業種で技術者要件を満たせる人がいるかを当てていきます。
ここでよくあるのが、工事はやっているのに、証明資料が弱いパターンです。請負契約書や注文書、請求書、入金記録など、実務経験を裏付ける資料の集め方で差が出ます。
また、経審まで視野に入る場合は、技術者の体制がより重要になります。許可だけ取れても、その後に元請けから経審を求められると、また準備が必要になることがあります。
財産的基礎
財産的基礎は、会社として最低限の資金的な裏付けがあるか、という要件です。
ここも、難しい話に見えますが、まずはシンプルに捉えて大丈夫です。
新規許可の場合、自己資本や資金の裏付けをどう示すかがポイントになります。
決算書の内容、預金残高、借入の状況など、会社によって見せ方が変わります。
元請けに急かされている場合、資金繰りと同時に走っていることも多いので、ここは資金調達支援の話とつながることがあります。許可取得の準備を進める中で、金融機関との付き合い方や、資金繰りの整理も必要になるケースがある、というイメージです。
関連して押さえたい手続き
許可の話を進めると、周辺の手続きがセットで出てくることがあります。ここも先に知っておくと、焦りが減ります。
決算変更届が前提になるケース
既に許可を持っている会社の更新や業種追加では、決算変更届が出ていることが前提になります。
また、新規許可でも、会社の状況によっては決算内容の説明が重要になる場面があります。
決算変更届は、後回しにされやすい一方で、いざ必要になると足を引っ張りやすい手続きです。早めに整えておくと、その後がラクです。
経営事項審査(経審)を求められる流れ
元請けが公共工事寄りだったり、発注者が自治体や公共関連だったりすると、許可だけでは足りず、経審まで求められることがあります。
経審は、会社の点数化に近い仕組みで、技術者、財務、施工実績などが絡みます。
今すぐ必要でなくても、元請けがそういう方向に動いているなら、将来の見通しとして頭の片隅に置いておくと良いです。
資金調達支援が必要になるタイミング
許可取得の準備をしていると、
・資本金や自己資本の見せ方
・決算の整え方
・当面の資金繰り
といった話が出てくることがあります。
特に、許可取得をきっかけに受注が増える局面では、運転資金の確保もセットで考えると安心です。ここは、金融機関との相談や、事業計画の整理につながる部分です。
次章では、ここまでの制度理解を踏まえて、実際に何から手を付ければよいかを行動手順に落とします。チェックリスト形式で、順番に整理していきます。
第4章 まずここから動けば迷いにくい実践ステップ
最初にやっておきたい全体チェック
制度の話を一通り見てきましたが、ここからは実際にどう動くかです。
ポイントは、いきなり申請書を書き始めないことです。先に土台を固めておくと、途中で止まりにくくなります。
まずは、次の点を順番に確認してみてください。
会社の実態と許可区分を整理する
最初にやるのは、自社がどの業種で許可を取りたいのかをはっきりさせることです。
- 内装なのか
- 電気なのか
- 設備なのか
- 解体なのか
- 複数にまたがるのか
実際の工事内容と、許可業種がズレていると、後で元請けとの認識が合わなくなります。
元請けから求められているのが、どの業種の許可なのかも、この時点で確認しておくと安心です。
経管候補と資料を洗い出す
次に、経営業務の管理責任者になれそうな人を整理します。
・代表者本人
・役員
・過去に経営に関わっていた人
誰を軸にするかで、集める資料が変わります。
履歴書のように、時系列で経歴を書き出してみると、抜けや重なりが見えやすくなります。
あわせて、登記簿、過去の会社資料、契約関係の書類なども探しておくと、後で慌てずに済みます。
営業所技術者の要件を確認する
営業所技術者については、資格型か実務経験型かをはっきりさせます。
資格がある場合は、証明書類の準備。
実務経験の場合は、年数と内容を裏付ける資料の整理。
ここで大事なのは、「やっていた」だけで終わらせないことです。
第三者に説明できる形にしておくことで、申請がスムーズになります。
契約書や請求書で金額を確認する
500万円ラインや業種判断のために、過去の契約関係も一度整理します。
- 請負契約書
- 注文書
- 請求書
- 入金記録
このあたりをまとめて見直すと、実態が整理しやすくなります。
後から探すより、早めに集めておく方が負担は軽くなります。
間に合わない場合の現実的な選択肢
準備を進めてみると、どうしても時間が足りないケースも出てきます。
そんなときは、無理に突っ込まず、現実的な対応を考える方が安全です。
工事の進め方を見直す場合
状況によっては、契約形態や役割分担を調整できる場合があります。
例えば、
・元請け側が主体となる形に切り替える
・許可を持つ会社との役割分担を明確にする
・請負から常用契約に近い形にする
など、案件ごとに選択肢があることもあります。
ただし、形式だけ整えて実態が伴わない形は、後で問題になりやすいので注意が必要です。
下請扱いで整理できるケース
許可を持つ会社の下で、下請として整理することで対応できる場合もあります。
この場合も、契約関係や責任範囲を明確にしておくことが前提になります。
元請けに説明するときは、「現在この形で調整しています」と、具体的に伝えられる状態を作っておくと話が通りやすくなります。
絶対に避けたい対応
急いでいるときほど、やってしまいがちな対応があります。
・名義だけ借りる
・書類を形だけ合わせる
・実態と違う説明をする
短期的には楽に見えますが、更新、経審、調査の場面で必ず引っかかります。
結果的に、取引そのものに影響することもあります。
元請けへの伝え方を整理しておく
準備を進めながら、元請けへの説明も並行して考えておくと安心です。
ポイントは、できることと、まだ時間がかかることを分けて伝えることです。
例えば、
・現在、要件確認と資料整理を進めている
・申請までの目安は◯か月程度を見込んでいる
・途中経過は随時共有する予定
こうした形で整理すると、元請け側も社内調整がしやすくなります。
無理に断定せず、現実的な見通しを共有する方が、信頼関係は保ちやすくなります。
次章では、ここまでの内容を踏まえて、今後の進め方と相談の考え方をまとめます。
第5章 今後の進め方を整理して、無理なく前に進む
今日やることは3つに絞っていい
ここまで読んでいただくと、やることが意外と多いと感じたかもしれません。
正直、その感覚は普通です。建設業許可は、片手間で一気に終わる手続きではありません。
だからこそ、最初から完璧を目指す必要はありません。
まずは、次の3つに絞って動いてみてください。
1つ目。
自社がどの業種で許可を取る必要があるのかを整理する。
2つ目。
経管と営業所技術者の候補を決めて、経歴や資料をざっくり集め始める。
3つ目。
元請けに対して、現在の進捗と見通しを共有する。
この3つが動き出すと、全体の歯車が回り始めます。
早めに動くほど選択肢は増えていく
現場を見ていると、早めに動いた方ほど、対応の幅が広がっています。
例えば、
・申請まで余裕を持って準備できる
・業種の組み合わせを検討できる
・技術者体制を整えやすい
・資金繰りも含めて調整できる
逆に、期限ギリギリになると、「通すこと」だけが目的になりがちです。
そうなると、本来もっと良い形があっても選べなくなってしまいます。
許可はゴールではなく、取引を安定させるための土台です。
長く付き合える形を作るつもりで準備する方が、結果的に負担は小さくなります。
相談の使い方をうまく考える
建設業許可は、調べればある程度の情報は出てきます。
実際、自力で進めている方もたくさんいます。
ただ、途中で止まってしまうケースも少なくありません。
・要件に当てはまるか判断できない
・資料が足りているか不安
・元請けへの説明に迷う
・スケジュール感がつかめない
こうした段階で、一度専門家に確認するだけでも、方向性がかなり整理されます。
最初から丸投げする必要はありません。
スポット相談のような形で、今の状況を整理する使い方も十分ありです。
無理のない形で前に進むために
元請けに許可を求められると、どうしてもプレッシャーがかかります。
仕事を止めたくない。信用を落としたくない。その気持ちは自然です。
だからこそ、焦りだけで判断せず、現実的な選択肢を一つずつ積み上げていくことが大切になります。
・今の体制で取れそうか
・どこがボトルネックか
・どれくらい時間がかかりそうか
これが見えてくるだけでも、不安はかなり減ります。
建設業許可や経営事項審査、資金調達支援などは、それぞれ別の制度に見えて、実務ではつながっています。
一つずつ整理していけば、必ず形になります。
もし、進め方に迷ったときは、早めに状況を整理する場を作ってみてください。
一人で抱え込まず、使える選択肢をうまく使いながら、無理のない形で進めていくことが、長く仕事を続けるための近道になります。

