建設会社に起きる変化
結論からいきます。育成就労は、建設会社にとって人手不足対策の選択肢が広がる制度です。ただし、制度の入口でつまずく会社も増えます。原因はだいたい同じで、書類と社内体制が追いついていない。現場が忙しいほど後回しになりがちなので、ここは先に押さえておくのが得策です。
育成就労は何のための制度?ざっくり一言でいうと
育成就労は、人手不足分野で3年間働きながら特定技能1号水準の技能を身につけてもらい、そのまま特定技能へつなげて長期的に戦力を確保するための制度です。技能実習は発展的に解消していく方向で、制度としては育成就労→特定技能という分かりやすいキャリアの道筋を作る考え方です。
現場目線に訳すとこうです。
・来日して終わりではなく、育てて、定着してもらう設計に寄せていく
・採用だけでなく、教育計画や就労管理まで見られる範囲が広がる
つまり、現場の段取り力がそのまま制度対応力になります。
いつ始まる?準備はいつから?日付で腹落ちさせる
運用開始(施行日)は令和9年4月1日、つまり2027年4月1日です。
さらに、令和8年度には監理支援機関の許可や育成就労計画の認定について、施行日前申請を受け付ける予定も示されています。
ここでよくある勘違いが、始まるのは先だからまだ大丈夫、です。制度は先でも、申請や準備の動きは前倒しで始まります。現場が忙しい会社ほど、気づいたら申請の波に飲まれるので注意です。
建設分野はどれくらい受け入れる想定?上限があるのがポイント
育成就労は、特定技能と同じく分野ごとに受入れ見込数(上限)を設定して運用する方針です。
そして、2028年度末までの受入れ見込み数の案として、建設分野は育成就労が123,500人、特定技能1号が76,000人、合計199,500人という整理が示されています(案なので今後変わる可能性あり)。
上限があるということは、制度が始まったら早い者勝ちになる、という単純な話ではありません。ただ、申請が集中しやすい時期は確実に来ます。社内の書類が散らかっている状態だと、ここで詰まります。現場で言うと、材料はあるのに段取り表がないから止まる、あれに近いです。
なぜ書類と社内体制がテーマになるのか
育成就労は、ただ雇う制度ではなく、育てる制度です。育成就労計画、就労の管理、支援体制など、運用面の説明責任が増える方向にあります。
さらに移行期には、技能実習の経過措置も絡みます。入管庁と厚労省が経過措置の説明資料をまとめ、技能実習機構側でも案内が出ています。
ここで現場あるあるを1つ。
人の配置は得意だけど、書類の最終責任者がいない。これ、けっこう多いです。結果として、担当者が疲弊して、手続が遅れて、現場が余計に回らなくなる。制度対応は、結局そこに戻ってきます。
このブログで最終的に何を持ち帰るか
次章からは、建設会社で起きがちなつまずきパターンを事例として整理します。
そして、制度のポイントをかみ砕いたうえで、今から整えるべき書類と社内体制を、実務で回る形に落とし込みます。建設業許可や経営事項審査、資金調達支援といった日常業務ともつなげて説明していくので、制度の話が苦手でも大丈夫です。
現場あるあるで見えてくるつまずきポイント
育成就労の話を聞くと、よし人が増えるぞ、と期待したくなります。分かります。現場は常に人手不足ですからね。
ただ、制度が変わるときにいちばん困るのは、採用そのものよりも、採用後の運用が回らないパターンです。ここは建設業の現場で何度も見かける落とし穴です。
あるある事例①採用は決まったのに配属できない
例えばこんな流れです。
人材会社や紹介ルートで話が進み、来日や入社の段取りも見えてきた。現場監督も手を叩いて喜ぶ。ところが、いざ配属直前で社内がザワつく。
どの現場に入れる?安全教育は誰がいつやる?通訳は?作業手順書は?現場ルールは誰が説明する?
この時点で、書類だけでなく段取りの責任者が決まっていないと、一気に止まります。結果、現場は待つ、本人は不安になる、周囲は焦る。で、最悪の場合、せっかくの採用が定着しない。
建設業の採用は、入れて終わりではなく、入れた初日が勝負です。
つまずきの原因はだいたいこれ
・教育担当が決まっていない
・手順が現場ごとにバラバラ
・連絡が口頭中心で記録が残らない
・書類の所在が分からない
軽く見えますが、ここが制度対応の土台になります。育成就労は育てる前提の制度なので、育成の段取りが曖昧だと説明も運用も苦しくなります。
あるある事例②事務が回らず、社内が疲弊する
次はバックオフィス側の話です。
現場は前へ進む、でも事務は追いつかない。給与、勤怠、社会保険、雇用契約、在留手続の準備、現場ごとの入場書類。やることが増える。
そしてよく起きるのが、誰か一人に全部が寄る状態です。
こうなると、忙しい時期に限って重要書類の更新が遅れたり、必要な情報が社内で揃わなかったりします。建設業許可の更新や変更届、経営事項審査の準備、さらに資金調達支援のために試算表や資金繰り表を整えたい時期と重なると、もう手が足りません。
現場の火消しをしながら書類も整える、これが一番しんどい。
つまずきの原因はだいたいこれ
・情報が現場に散っている
・書類の様式が統一されていない
・チェックの順番が決まっていない
・外部に出す前の社内確認がない
制度変更期は、ここが顕在化します。普段は気合で回っていた部分が、回らなくなるタイミングです。
あるある事例③資金繰りが静かに苦しくなる
人が増えると、短期的にはコストも増えます。採用費、教育の時間、通訳や翻訳、現場の受入れ準備。さらに、育成のために先輩職人が手を止める時間も発生します。
このとき、資金繰りの見通しが曖昧だと、現場は回っているのに手元資金が減る、という状況になりがちです。現場あるあるの怖いところは、忙しいほど現金が減ることがある点です。
資金調達支援の場面でも、人件費の増加をどう説明するか、教育投資をどう位置づけるか、採用計画と受注計画が整合しているかが見られます。ここが説明できると話が早い。できないと、ひたすら追加資料の往復になります。
制度の話は、結局いつもの仕事の延長に戻ってくる
育成就労は制度の話に見えますが、現場に落ちると段取りと書類の話になります。
採用を成功させる鍵は、来る前より来た後の運用にあります。次章では、育成就労制度のポイントを初心者向けにかみ砕きつつ、建設会社が整えるべき書類と社内体制を、何から順にやると安全かという順番で整理します。
建設会社が押さえるべき変更点
制度の話って、読むだけで眠くなることがあります。分かります。
なのでここでは、建設会社が実務で困らないために必要な部分だけ、順番にかみ砕きます。結論はシンプルで、育成就労は育てて定着させる設計に寄せた制度です。その分、受入れ前後の段取りと書類の筋道がより重要になります。
育成就労とは何か
技能実習の後継というより、特定技能への入口
育成就労制度は、人手不足分野で3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し、確保する制度と整理されています。育成就労と特定技能に連続性を持たせ、働きながらキャリアアップできる分かりやすい制度を作る、という考え方です。
技能実習は発展的に解消する方向で議論が進んでおり、制度の目的も人材育成と人材確保に軸足を移しています。
建設会社の目線に翻訳するとこうです。
・採用して終わりではなく、3年で特定技能へつなげる道筋を意識した運用が求められる
・教育や配置の説明ができる体制が強みになる
2027年4月1日が起点
育成就労制度で実際に受入れが可能になるのは、施行日の令和9年4月1日、つまり2027年4月1日からです。
さらに、令和8年度には監理支援機関の許可や育成就労計画の認定について、施行日前申請を受け付ける予定も示されています。
ここが実務上のポイントです。受入れ開始は2027年でも、社内の準備や外部機関の申請準備は2026年度に動きやすい。現場の繁忙期に重なると一気にしんどくなるので、先に棚卸しが効きます。
受入れ見込数という上限の考え方
建設分野も枠の議論がある
育成就労は、特定技能と同様に分野ごとに受入れ見込数を設定し、それを上限として運用する方針です。日本人の雇用機会の喪失や処遇低下を防ぐ観点などから、生産性向上や国内人材確保の取組を行ってもなお不足する人数を踏まえる、とされています。
建設分野の受入れ見込数については、報道ベースですが、育成就労と特定技能を合わせて約19万9500人という整理が出ています。
注意点は、数字だけ追っても現場は回らないことです。枠があるなら、なおさら準備の質で差が出ます。
監理支援機関と育成就労計画|会社側が意識すべきこと
Q&Aでは、令和8年度に監理支援機関の許可と育成就労計画の認定について、施行日前申請を受け付ける予定とされています。
また、育成就労計画の認定について、施行日前申請が可能となる時期は調整中で、追って公表とされています。
つまり、会社側は次を前提にしておくと安全です。
・外部の支援体制や手続窓口が整い始める前に、自社の受入れ体制を説明できる状態にしておく
・育成就労計画に関係しそうな情報を、現場と事務の間で集められる状態にしておく
ここで効いてくるのが、日頃の書類運用です。建設業許可の変更届や経営事項審査の準備で、誰がどの資料を持っているかが見える会社は強い。逆に、担当者の頭の中にしかない会社は苦しくなります。
主務省令は公布済み、分野別運用は今後
情報の追い方を決めておく
育成就労制度に関する主務省令は令和7年9月30日に公布済みとされています。
一方で、分野別運用方針や運用要領の公表時期は未定で、策定され次第周知するとされています。
実務的には、ここがいちばんモヤっとしやすいところです。細部が決まってから動こうとすると遅れがち。なので、決まっていない部分は追いながら、決まっている骨格だけ先に整えるのが現実的です。
制度の骨格はもう出ている、あとは会社の段取り勝負
育成就労は2027年4月1日開始、特定技能へつなげる設計、分野ごとの上限設定、そして2026年度に前倒しの申請準備が動く可能性。骨格はこの時点で把握できます。
次章では、ここまでの制度整理を踏まえて、建設会社が今から整えるべき書類と社内体制を、やる順番が分かる形で具体化します。現場が忙しくても回る形に落とし込みます。
書類と社内体制を整える5ステップ
制度の細かい運用が全部出そろうのを待つ。気持ちは分かります。が、待っている間に現場は忙しくなるし、申請の波も来ます。なので第4章は、今日から手を付けられることだけに絞ります。ポイントは、制度対応を特別なイベントにしないこと。建設業許可や経営事項審査で普段やっている書類整理と、同じ地続きにして回すのがコツです。
ステップ①受入れ責任者と現場責任者を分けて決める
最初に決めるのは書類です、ではなく人です。ここを間違えると、全部が口頭伝言ゲームになります。
おすすめの役割分担はこうです。
・受入れ責任者:会社全体の窓口。社内決裁と外部連絡の最終責任
・現場責任者:配属先の指揮。安全教育や日々のフォローの責任
・事務担当:勤怠、契約、各種提出書類の管理責任
一人で全部やる設計は、繁忙期に必ず破綻します。人が増えるほど、連絡の回数は指数関数的に増えます。ここ、地味に怖いです。
ここだけは紙に書いて貼る
・誰が決めるか
・誰が連絡するか
・誰が記録を残すか
この3点が揃うと、現場のストレスが目に見えて減ります。
ステップ②書類の棚卸しをして、置き場と更新ルールを固定する
育成就労は育てる制度です。育てるには、説明できる材料が必要になります。いきなり新しい書類を増やすより、まず現状の棚卸しが効きます。
まずは社内に散らばりがちなものを一括で整理します。
・雇用関連:雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、賃金台帳の管理方法
・現場関連:安全教育記録、入場書類、作業手順の説明記録
・会社関連:会社概要、許可証の控え、決算書、建設業許可の変更履歴、経営事項審査の提出資料一式
これらは制度に限らず、金融機関対応や元請対応でも求められる定番です。つまり、整えるだけで二度おいしい。
やり方はシンプルでOK
・置き場は一つに寄せる(紙でもデータでもいい)
・ファイル名のルールを決める(年月日_案件名_書類名など)
・更新タイミングを決める(決算後、許可更新後、年度初めなど)
見つからない書類を探す時間、あれが一番もったいないです。しかも忙しい日に限って見つからない。あるあるです。
ステップ③受入れ当日の導線をテンプレ化する
採用の成否は初日で決まる。言い過ぎではありません。初日がグダると、不安が増え、現場の空気も悪くなります。
最低限、次をテンプレにします。
・初日の集合場所と担当者
・会社ルールの説明メモ(通訳が入る前提で短文)
・安全教育の手順(動画でも紙でも可)
・現場配属の決定ルール(誰がいつ決めるか)
・困ったときの連絡先(現場、事務、緊急の3系統)
建設業っぽい工夫
・朝礼で使う定型フレーズをカード化
・危険ポイントは写真で共有
・現場ごとの暗黙ルールを文字に落とす
現場の暗黙知は武器ですが、新しく来た人には壁にもなります。壁は低くしておくほうが、結局早く戦力化します。
ステップ④教育コストを見える化して資金繰りに先回りする
人を育てる期間は、売上がすぐに伸びるとは限りません。一方でコストは先に出ます。だから資金繰りの見える化が効きます。
最低限の管理項目はこれで十分です。
・採用関連費(紹介料、渡航関連、通訳など)
・教育時間の見積(先輩職人の手が止まる時間も含める)
・現場別の追加コスト(安全備品、宿舎、移動など)
・月次の手元資金の見通し
ここが整うと、資金調達支援の場面でも説明が通りやすくなります。人件費が増える理由と、いつ戦力化して回収する想定か。この筋道がある会社は強いです。
ステップ⑤外部パートナーの候補を今のうちに決めておく
制度が動くと、窓口も混みます。あとで探すほど不利になります。今の段階でやることは、契約することではなく候補を決めて比較できる状態にすることです。
候補選びの観点はこのあたりです。
・建設分野の受入れ実績があるか
・現場への説明支援ができるか(書類だけ代行、になっていないか)
・連絡が速いか(返信速度は正義です)
・費用体系が明瞭か
決め手は、困ったときに一緒に汗をかけるかどうか。書類が正しくても、現場が止まったら意味がありませんからね。
今やることは制度の暗記ではなく、段取りの整備
育成就労の開始は2027年4月1日です。だからこそ今は、制度の細部待ちではなく、社内の段取りを整える時間にできます。
育成就労の準備は、会社の足腰を強くする
ここまで読んで、結局何をすればいいの?と思った方へ。大丈夫です。制度の暗記は不要です。
結論は一貫していて、育成就労は育てて定着させる制度なので、書類と社内体制が整っている会社ほど得をします。逆に言うと、今から整えるだけで差がつきます。
結局、育成就労で何が変わるのか
育成就労は、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し、確保する制度です。技能実習は発展的に解消し、育成就労から特定技能へ連続させることで、外国人がキャリアアップしやすい制度を作る方向です。
そして運用開始(施行日)は令和9年4月1日、つまり2027年4月1日とされています。
さらに令和8年度には、監理支援機関の許可や育成就労計画の認定について施行日前申請を受け付ける予定も示されています。
日付で言うと、受入れ開始は2027年4月1日。でも準備の動きは2026年度に前倒しされる可能性が高い。ここが現場の体感に近いところです。
今やるべきことは3つだけでいい
全部を一度にやろうとすると続きません。現場は忙しいですからね。なので最低限、次の3つに絞って進めるのが現実的です。
1.責任者と窓口を決める
受入れ責任者と現場責任者、事務担当を切り分ける。誰が決めるか、誰が連絡するか、誰が記録するか。この3点が決まるだけで、混乱が激減します。
2.書類の置き場と更新ルールを固定する
探し物の時間をゼロに近づける。建設業許可や経営事項審査で使う資料の整理は、そのまま制度対応にも資金調達支援にも効きます。
3.受入れ初日の導線をテンプレ化する
初日がうまくいくと定着率が上がります。安全教育、現場ルール、連絡先の3点セットはテンプレにしておくと強いです。
建設業許可や経営事項審査ともつながる話
育成就労の準備は、外国人雇用だけの話に見えますが、実は会社の管理体制そのものを整える作業です。
社内の書類が揃い、運用が見える会社は、建設業許可の更新や変更届もスムーズになり、経営事項審査の資料作成も速くなります。さらに、資金繰りの見通しが説明できるので金融機関との会話も通りやすい。
制度対応をきっかけに、会社の足腰を強くする。これが一番おいしい使い方です。
まだ細かい運用が出ていないのに、何を基準に動く?
基準は、決まっている骨格だけ先に整える、です。
主務省令は公布済みで、分野別運用方針や運用要領は今後公表とされています。
だから細部は追いながら、責任者、書類管理、受入れ導線の3点を先に整える。これなら、運用が出た時に上乗せするだけで済みます。
まずは30分の棚卸しから始めよう
今日できる最初の一歩は、棚卸しです。難しいことはしません。
次の質問に答えるだけでOKです。
・受入れの窓口は誰か
・雇用契約書や就業規則はどこにあるか
・安全教育の記録は残っているか
・建設業許可や経営事項審査の資料は一式まとまっているか
・教育にかかる時間と費用の目安を言えるか
制度と現場の間の整理がいちばん効く
育成就労は、制度の理解と現場の運用をつなぐところが一番むずかしいです。制度の文章は正しいけれど、現場の段取りに落ちていない。ここで詰まります。
もし、自社の場合は何から手を付けるべきか、書類が足りているか、外部パートナー選びの観点は合っているか、そんな整理が必要なら、当事務所が実務の目線で一緒に棚卸しいたします。行政書士としての手続だけでなく、建設業許可や経営事項審査、資金調達の書類運用と合わせて、全体が回る形に整えるのが得意分野です。
最後にもう一回だけ。育成就労は2027年4月1日開始です。
準備は早いほど楽になります。忙しい会社ほど、先に少しだけ整えておく。それが一番の近道です。

