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「知らなかった」では済まされない、決算変更届の出し忘れ
「えっ、毎年出すんですか?それ……初めて聞きましたよ」
これは、市川市内のある小規模建設業者の社長さんから実際に聞いた言葉です。
経営者の皆さんは、現場に出て、職人さんを動かし、元請とのやりとりをこなし、資材手配も自分でやって……とにかく多忙。そんな中で、「建設業許可の“維持手続き”」なんて、正直なところ後回しになってしまうこともありますよね。
でも、ちょっと待ってください。
建設業許可を持っている限り、「毎年の決算変更届(事業年度終了届)」の提出は義務です。
しかも、これを怠ると、更新時に許可が失効するおそれがあるんです。
「うちは更新のときだけ出せばいいと思ってた」は危険信号
たしかに、更新は5年ごと。しかし、千葉県の手引きでは、「決算終了後4ヶ月以内」に毎年提出が必要と明記されています。
例えば3月決算なら、7月末が提出期限。これを何年も放置していると、いざ更新というときに「未提出の決算書をすべて出してください」と言われ、バタバタする……というのが“あるある”です。
しかも、その間に何か情報変更があった(役員交代・事務所移転など)場合、それも未届ならダブルパンチ。最悪、「形式的な不備で更新できない」事態も起こり得ます。
許可が切れたら、工事は受けられない
「別に一回くらい出し忘れても大丈夫でしょ?」と思っている方へ。
残念ながら、建設業許可は“失効したらゼロからの取り直し”です。そしてその間、許可業種での500万円以上の工事は請けられません。
現場は止まり、取引先からの信頼も失い、何より「建設業者」としての看板が一度外れてしまいます。これは、経審や公共工事どころか、民間元請との契約にも支障を来すリスクです。
この記事では、決算変更届を毎年出すことの意味と、その実務的な注意点を、市川市の実情も交えながら解説していきます。
次章では、実際によくある「出し忘れ」「提出ミス」のリアルな現場例をご紹介します。
“まさか自分もそうなるとは”と思う前に、ぜひチェックしてください。
「うちもそれやってた…」出し忘れで許可更新に苦労した現場の話
市川市でリフォーム業を営むT社長。
小さな工務店ながらも、地元密着で着実に実績を重ねてきた方です。
5年前に建設業許可(内装仕上工事業)を取得し、地元の元請やマンション管理組合からの仕事も増え始めていました。
そんなある日、T社長が慌てた様子で相談に来ました。
「更新申請を出そうとしたら、決算変更届が3年分出てないって言われて…!」
✅ 毎年の“提出当たり前”を知らなかった
聞けば、許可取得のときに行政書士に任せてから、「更新は5年後でOK」と思い込んでいたとのこと。
決算変更届を“毎年出すもの”という意識がなかったんです。
これ、実はT社長だけの話ではありません。建設業に特化した申請支援をしていると、「更新の直前だけ相談する」ケースは非常に多い。
しかし、いざ更新時になると――
- 直近3年分の決算書類が提出されていない
- 代表者の住所が変わっていたのに変更届が未提出
- 税務申告内容と食い違いがある書類を作成してしまった
こうした事態が重なると、最悪の場合“更新不可”の判断を受けることもあり得るのです。
✅ 工事ができない“空白期間”が発生することも
T社長は、3年分の届出を急いでまとめ、始末書とともに県に提出しました。
それでも、審査期間や書類の不備確認などが重なり、許可の有効期限を超えてしまったのです。
その結果、元請け会社からは「一旦契約は保留で」と言われ、大きなリフォーム案件を逃してしまいました。
さらに、公共工事案件の入札にも参加できず、売上計画が崩れてしまったとのこと。
✅ 「まさか自分が…」が一番危ない
建設業許可は、一度取ったら“安泰”ではありません。
許可を持ち続けるには、毎年のメンテナンス(決算変更届や変更届など)が欠かせないのです。
このあたりの制度は、忙しい現場の皆さんからすれば「複雑でわかりにくい」「忘れやすい」のが当然です。
だからこそ、早めに専門家に相談して、トラブルの芽を潰しておくことが一番のリスク管理になります。
「決算変更届」って結局なに?現場目線でスッキリ解説!
「毎年出せって言われたけど、何をどう出せばいいの?」
――そんな疑問にお答えします。
決算変更届(正式名称:事業年度終了報告書)は、簡単に言えば、
「今年の営業成績を報告する書類」
=建設業許可を持ってる人は、毎年出す義務があるもの
です。
✅ 出すタイミング:決算が終わったら「4ヶ月以内」
たとえば、3月決算の会社なら7月末までに提出。
この「4ヶ月以内」は、建設業法のルールで決まっています。
「まあ大丈夫でしょ」と先延ばしにすると、あっという間に過ぎます。注意!
✅ 書く内容:いわば“建設業専用の決算報告書”
税務署に出す決算書とは別に、建設業許可用に以下のような書類を作成します:
- 事業年度終了報告書(様式第20号)
- 工事経歴書(様式第21号)
- 直前3年の工事施工金額(様式第22号)
- 使用人数(様式第23号)
- 財務諸表(貸借対照表・損益計算書など)
これに、納税証明書・法人税確定申告書(写し)などを添えて提出します。
個人事業主もほぼ同様ですが、確定申告書の控えを添付します。
✅ よくある誤解:「赤字だと出しちゃいけない?」
いえいえ、赤字でも提出は必須です!
むしろ、赤字を隠して未提出にすると「隠してる」と判断され、更新や審査で不利に働くことも。
県としては、「黒字か赤字か」よりも、「ちゃんと提出しているか」を重視しています。
コツコツ出している会社のほうが信頼されやすいのは、どんな業界でも同じです。
✅ 電子申請も可能。でも現場では「紙提出」が根強い
千葉県では、電子申請(JCIP)にも対応していますが、市川市周辺では「紙で出す方が早い」と感じる経営者の方も多いです。
郵送 or 県の土木事務所に持参、というやり方も根強く残っています。
「何を出せばいいか分からない」「過去の分が抜けてるかも」という方は、一度整理してみるだけでも大きな前進です。
✅ まずはここから!3分でできるセルフチェック
以下のチェックリストを、スマホでも紙でもOKなので、自社に当てはめてみてください。
🔲 毎年の決算変更届を「4ヶ月以内」に出している
(例:3月決算なら、7月末までに提出)
🔲 出し忘れた年がない(直近5年分、県に提出済み)
🔲 書類は正確に作られている(税務申告と内容が一致)
🔲 変更届(役員・住所・資本金など)も必要に応じて提出している
🔲 更新時に慌てた経験がある → その原因を把握している
ひとつでも「?」があった方は、早めの対策がオススメです。
✅ やるべきことはこの3つだけ
① 提出状況を役所に確認する
→ 市川市なら、葛南土木事務所で確認可能。(大臣許可の場合は関東地方整備局にお問い合わせください。Tel:048-601-3151)
電話で「過去○年分の提出状況を知りたい」と伝えれば、親切に教えてくれます。
千葉県内における土木事務所
名称 | 電話 | 管轄市町村 |
---|---|---|
千葉土木事務所 | 043-242-6101 | 千葉市・習志野市・八千代市 |
葛南土木事務所 | 047-433-2421 | 市川市・船橋市・浦安市 |
東葛飾土木事務所 | 047-364-5136 | 松戸市・野田市・柏市・流山市・我孫子市・鎌ケ谷市 |
印旛土木事務所 | 043-483-1140 | 佐倉市・四街道市・八街市・印西市・白井市・酒々井町・栄町 |
成田土木事務所 | 0476-26-4831 | 成田市・富里市・多古町・芝山町 |
香取土木事務所 | 0478-52-5191 | 香取市・神崎町・東庄町 |
銚子土木事務所 | 0479-22-6500 | 銚子市 |
海匝土木事務所 | 0479-72-1100 | 旭市・匝瑳市 |
山武土木事務所 | 0475-54-1131 | 東金市・山武市・大網白里市・九十九里町・横芝光町 |
長生土木事務所 | 0475-24-4521 | 茂原市・一宮町・睦沢町・長生村・白子町・長柄町・長南町 |
夷隅土木事務所 | 0470-62-3311 | 勝浦市・いすみ市・大多喜町・御宿町 |
安房土木事務所 | 0470-22-4341 | 館山市・南房総市・鋸南町 |
安房土木事務所 鴨川出張所 | 04-7092-1107 | 鴨川市 |
君津土木事務所 | 0438-25-5131 | 木更津市・君津市・富津市・袖ケ浦市 |
市原土木事務所 | 0436-41-1300 | 市原市 |
出典:千葉県公式HP
② 未提出があれば“今からでも出す”
→ たとえ数年分でも、まとめて提出すれば更新に間に合う可能性があります。
ただし、始末書が必要な場合もあるので注意。
③ 今後のスケジュールを「見える化」する
→ スマホのカレンダーでもホワイトボードでもOK。「〇月決算→〇月末まで提出」と毎年の流れを明文化。
外注している場合でも、事務員さんや家族と共有しておくと◎です。
✅ 市川市の建設業者に伝えたいこと
地域の職人さんたちと話していると、「どうせ難しいから、まとめて行政書士に任せた方が早い」という声もあります。
それは間違いではありません。むしろ、「自分で抱え込みすぎない」ことこそ、経営者の責任とも言えます。
建設業許可を「守る」ことは、仲間と家族と未来を守ること
忙しい現場の中で、「書類なんて後回し」「まだ時間あるでしょ」と思ってしまうのは、誰にでもあることです。
でも、建設業許可はただの“資格”じゃない。
それは、あなたの仕事を、信頼を、そして家族の生活を支えるための“土台”なんです。
✅ 許可は、あなたが築いてきた「信用」の証
建設業許可があることで、元請からの信頼も増え、取引先からの発注も安定します。
公共工事や大型案件にもチャレンジできるし、銀行からの資金調達にもプラス評価。
「あの人はちゃんとやってる」――その安心感は、実績だけじゃなく、こうした制度の履行からも生まれるのです。
市川市のような地元密着の地域では、特にその信用が強く作用します。
地元の元請や建材業者の間で「しっかりした会社」と思われるかどうかは、実はこうした“当たり前の手続き”の積み重ねで決まってきます。
✅ 行政手続き=“面倒な仕事”ではない
たしかに、毎年の決算変更届は手間がかかります。
でも、それは「面倒な事務」ではなく、自分の会社を守るための整備作業。
道路で言えばアスファルトの補修、建物で言えば基礎の点検のようなもの。
やらなければ、見えないところから少しずつ崩れていきます。
✅ 最初の一歩は、「状況を知ること」から
「うちは大丈夫かな?」と思ったそのときが、動き出すチャンスです。
一度整理すれば、次からはずっと楽になります。
もし手が回らないと感じたら、行政手続きに強い専門家に相談してみてください。
🧭 現場と制度の“橋渡し”として
私自身、自衛官として災害派遣を経験し、制度と現場のズレに何度も直面してきました。
だからこそ、今こうして「建設業の現場力を制度で支える仕事」を選んでいます。
制度は難しくても、「わかりやすく翻訳し、現場の人の行動につなげる」――それが私の使命です。
市川の建設業者の皆さんが、手続きで損をせず、もっと本業に集中できるように。
許可を守り、信用を守り、地域とともに歩んでいけるように。
そのための一歩として、このブログがお役に立てば幸いです。