外国人技術者をどう迎えるか?

外国人技術者をどう迎えるか?

目次

~建設業×行政書士の視点で読み解く「人手不足時代」の新戦略~

あなたの現場、こんな悩みありませんか?

  • 「若手の職人が集まらない、育たない」
  • 「技能実習生はいるけど、施工管理は任せられない」
  • 「外国人技術者ってどう採用すればいいの?」

千葉県市川市を拠点に建設業許可や融資支援を行っている行政書士として、私も数多くの現場監督・経営者の方々とお話ししてきました。その中で強く感じるのが、“施工管理を任せられる人材が本当に足りていない”という現実です。

そして今、その解決策として注目されているのが――
「外国人技術者の活用」です。

外国人技術者の採用・定着は、中小建設業の未来を左右する重要な経営戦略です。

2025年3月24日、国土交通省が「外国人技術者の採用・定着」について中小建設業向けのハンドブックを発表しました。これまで技能実習や特定技能といった“技能者”の活用が中心だった建設業界で、“技術者”として外国人を迎えるためのノウハウがついに整理されたのです。

なぜ今、「技術者」としての外国人が必要なのか?

建設現場のリアルを見れば、その必要性は一目瞭然です。

  • 施工管理技士や設計技術者の高齢化
  • 技能実習生に任せられる仕事の限界
  • 建設需要の増加に対し、担い手不足が深刻化

ここで改めて「技能実習」との違いに注意

これまで多くの中小建設業が活用してきた外国人労働力は、「技能実習生」が中心でした。
技能実習制度は“発展途上国への技術移転”を目的とした制度で、職種も限定され、原則3〜5年の期間内で現場作業を担う形が一般的です。

一方で、今回のテーマである「外国人技術者(技術・人文知識・国際業務)」は、正社員として施工管理や設計といった中核業務に携われる人材です。

比較項目技能実習生外国人技術者(技・人・国)
目的技能移転(国際貢献)通常の労働契約・雇用
業務内容現場作業が中心設計・施工管理・測量など
就労期間原則最大5年更新制で長期雇用も可能
支援体制監理団体による支援自社主導 or 登録支援機関活用

つまり、「これまで」とは人材像も制度もまったく異なるのです。

行政書士が解説する外国人材の分類

外国人材の在留資格は、建設業界で実務的に使われるものとしては主に3つのカテゴリーに分けられます。

在留資格対象職種主な条件・特徴
技能実習型枠・鉄筋・左官・配管などの現場作業員技能移転が目的/最大5年/支援は監理団体/原則転職不可
特定技能(1号)上記と同様の現場作業職技能試験・日本語試験合格必須/最大5年/転職可(要手続)
技術・人文知識・国際業務施工管理、設計、測量など専門的知識を活かす職種/大卒または専門卒+日本語力が目安/更新制で長期雇用可

🧭 ポイント解説

  • 技能実習生は「育てて帰す」ことを前提とした制度。企業側は“研修的立場”として接する必要があり、任せられる業務も限定的です。
  • 特定技能は“労働力確保”が主目的。一定の技能水準をクリアしていれば、即戦力として雇用可能です。
  • 技術・人文知識・国際業務(いわゆる高度人材)は、いわば「現場の司令塔」を担う人材。施工管理・設計・測量といった知識や判断が求められる仕事に就くことができます。

つまり、技能実習制度ではカバーしきれない“責任あるポジション”に外国人を登用できる時代が来たというわけです。

明日から動ける実践情報

この記事では今後、以下のような実践的な内容を順番に解説していきます。

  • 外国人技術者を受け入れて成功している中小企業の事例
  • 採用手順のステップ解説(ビザ手続き・求人方法など)
  • 定着させるための社内体制・コミュニケーションの工夫
  • 建設業許可や社会保険との連動対策
  • 市川市・千葉県で使える支援制度や相談先

まとめ

人手不足を“嘆く”時代は終わりました。これからは「戦略的に人を集める」時代です。
外国人技術者の採用・定着は、単なる人材確保ではなく、企業の成長戦略そのものです。

「採用方法がわからない」「自社に受け入れ体制がない」といった不安をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。行政書士として、法的な支援と現場に寄り添ったアドバイスを提供いたします。

外国人採用のリアルな現場事情

~市川の現場で実際にあった“ギャップ”と“成功体験”~

「こんなはずじゃなかった…」という現場の声

例えば、市川市内で電気工事業を営むA社。
昨年、東南アジア出身の外国人技術者(施工管理補助)を採用しました。しかし、現場監督からはこんな声があがりました。

「言葉の壁が予想以上だった。指示が通じないと、安全面でも不安になる。」
「技術的には問題ないが、日本の“段取り文化”に慣れていない。」

一方で、採用側の社長もこう振り返ります。

「面接では流暢に話していたのに、現場だと聞き返しが多い。通訳がいないと厳しい。」

結果として、半年で契約終了。
このように、「採用してから困る」という事態は、実はよくある話です。

それでも成功したB社の例

同じく市川市で建築施工業を営むB社は、3年前から外国人技術者の採用・育成に取り組んでいます。

B社が成功した理由は、「採用後」の工夫にありました。

  • 📋 採用前に適性チェック(専門用語テスト+現場見学)
  • 🏠 生活支援の徹底(住まい・携帯契約・市役所同行)
  • 🗣 日本人社員との“通訳代わり”の教育係を設置
  • 📚 週1の技術&日本語研修を継続実施

その結果、外国人社員は2級施工管理技士の資格を取得し、現場の中核として活躍中。
職人たちからも「〇〇くんは真面目で頼りになる」という評価を得るまでになりました。

❗問題の本質は「採用」ではなく「定着」

行政書士として許認可や労務書類に携わっていると、多くの経営者が「採用すること」をゴールと誤解している場面を見かけます。

しかし、本質はそこではありません。
「職場に馴染み、戦力として定着してもらうこと」こそが最重要です。

技能実習と技術者採用の“本質的な違い”

ここで重要なのが、「技能実習生」と「技術・人文知識・国際業務」ビザの人材との違いです。

比較項目技能実習生外国人技術者(技・人・国)
目的技能移転(国際貢献)通常の労働契約・雇用
雇用形態原則3~5年の期間限定無期限更新も可能
業務範囲定型的な現場作業施工管理・設計など高度職務
支援体制監理団体による支援が必須自社で対応が必要(場合によって支援機関)
転職原則不可(許可制)一定条件で自由に可能

🔍要点は「責任ある職務」に就けるかどうか。

技能実習制度は「育成」が主目的であるため、現場作業はできても施工管理や設計などの“指示を出す立場”には就けません。
一方、今回のテーマである外国人“技術者”は、設計図の作成や現場のマネジメントに関与できる立場。つまり、実務の中核を担う人材なのです。

  • 日本語スキルの見極め
  • 外国人ならではのキャリア設計
  • 技能実習や特定技能とのすみ分け
  • 家族帯同による生活基盤の安定化

これらを視野に入れないと、「せっかく採用したのに辞められる」という悪循環に陥ってしまいます。

💬 現場の声から学ぶ教訓

「実習生と違って“指示を出す側”として採用するなら、会社としての受け入れ体制が必要です。」(現場監督)

「ビザの更新忘れで焦った。制度理解が甘いとトラブルになる。」(経営者)

「日本人社員とのトラブルは、文化の違いというより“認識のズレ”。事前に説明しておけば防げたはず…」(人事担当)

これらの声は、ハンドブックでも取り上げられています。中小建設業にとっての「あるある」を先回りして対策することが、定着成功の鍵です。

リアルを知れば、備えができる

外国人技術者の採用は、“思いつき”ではうまくいきません。
でも、リアルな現場の失敗と成功の声を知れば、具体的な対策を取ることができます。

次章では、行政書士としての立場から「どのビザがどんな働き方に対応しているのか」「どんな書類が必要なのか」を専門知識でわかりやすく解説します。

行政書士が教える!外国人技術者の採用に必要な“制度”と“書類”の基本

~「技・人・国」ビザと採用のステップを正しく理解する~

「外国人の採用って、結局どんな手続きが必要なの?」

建設業の経営者の方々とお話ししていると、必ずと言っていいほどこの疑問が出てきます。
そして次に続くのは、

「技能実習生とは何が違うの?」
「入管って何を見てるの?」
「間違えたら不許可になるって本当?」

といった“制度への不安”です。
この章では、そうした疑問に対して、行政書士の立場から制度の基本と申請書類のポイントをわかりやすく解説します。

✅ 結論

「技術・人文知識・国際業務(いわゆる“技・人・国”)」のビザは、計画的に準備すれば中小建設業でも取得可能です。
ただし、入管手続きには“ポイントを押さえる戦略”が不可欠です。

制度の概要「技術・人文知識・国際業務」ビザとは?

この在留資格は、日本の大学や専門学校で建設系の学科を修了した外国人や、海外の大学で土木・建築を学んだ人材が対象です。

【対象となる業務】

  • 施工管理(現場監督補助・工程管理)
  • 設計補助(CAD操作、図面作成)
  • 測量、積算、見積補助 など

🧭 現場作業がメインの「技能実習」とは根本的に異なり、“知識を使う業務”が中心です。

📝 採用までの基本ステップ

  1. 採用対象の選定
    • 国内の日本語学校・専門学校・大学に通う留学生
    • 海外の大学で建設系を学んだ人材(現地採用)
  2. 雇用契約の締結
    • 業務内容・勤務地・勤務時間・給与条件を明記
  3. 必要書類の準備
    • 雇用契約書、会社案内、職務内容説明書、採用理由書、卒業証明書など
  4. 在留資格変更/認定申請
    • 留学生の場合:「在留資格変更許可申請」
    • 海外採用の場合:「在留資格認定証明書交付申請」
  5. 入管審査(1〜3ヶ月)→許可・就労開始

入管では、「業務内容がビザの範囲に合致しているか」「申請内容に矛盾がないか」を厳しく審査されます。

専門家として押さえたい!審査のチェックポイント

チェック項目説明
業務内容「現場作業のみ」だと不許可のリスク。管理・設計・測量など知識系業務であることが重要。
給与水準同等の日本人と比べて不当に低くないか。地方でも月給22万〜程度が目安。
組織体制指導役・日本語支援・キャリアパスの計画があると評価アップ。
採用理由書「なぜ外国人なのか?」「どう活躍してもらうのか?」を明確に説明。

⚠️ よくある落とし穴と対応策

「外国人の方が安いから採る」はNG

→ 雇用の合理性がないと判断され、“雇用の真実性が疑われる”という致命的なマイナスに。

「現場作業も少しお願いするつもりだった…」

→ 「専門的業務以外がメイン」と判断されれば不許可の可能性大。

✅ 解決策:職務の70%以上は施工管理・設計補助業務であることを示し、社内の業務分担図などを添付すると安心。

✨まとめ:制度を知れば、戦略が立てられる

外国人技術者の採用は、「知らずにやる」ほど危険な分野です。
ですが、制度を正しく理解すれば、建設業界の担い手不足を補い、現場力を高める強力な武器になります。

書類の整備・業務の設計・社内体制の見直しを含め、採用前の段階から行政書士に相談することが成功への第一歩です。

外国人技術者の“定着”を実現する5つのポイント

~明日から現場で活かせる!採用後のリアル対応策~

「採用したけど、すぐ辞められた…」

これは実際に市川市内の建設会社で起きたケースです。
フィリピン人の技術者を採用し、初めは期待されていましたが…

「日本語の壁で職人とうまく意思疎通ができなかった」
「生活面の不安が解消されず、帰国したいと言い出した」

経営者は、「せっかくビザを取って雇ったのに…」と悔しそうに語っていました。

このように、採用がゴールではなく“定着”こそが本番です。

✅ 結論

外国人技術者を“辞めさせない”ためには、「生活 × 言語 × キャリア」の三本柱を整えることが重要です。

🧭 なぜ定着しない?根本原因を整理

建設業における外国人技術者の離職理由は、制度的というより「環境・心理的な要因」がほとんどです。

主な離職要因内容
① 日本語が通じない職人との意思疎通、指示ミスがストレスに
② 生活不安住居・役所・銀行など「最初の壁」が高い
③ キャリア不透明「昇進できるのか」「資格が取れるのか」
④ 孤立感外国人が1人だけ、相談できる相手がいない
⑤ 社内理解不足上司・職人が受け入れに不慣れで誤解が起きる

明日からできる“定着支援”の5つのポイント

1️⃣ 生活支援:最初の3ヶ月がカギ

  • 住まいの確保・契約同行(外国人NGの物件も多い)
  • 携帯電話/銀行口座の開設
  • 役所への住所登録・国民健康保険加入

✅ ポイント:ここでつまずくと“帰りたい”と思ってしまう。支援は手厚く。

2️⃣ 日本語コミュニケーションの橋渡し

  • 社内に“日本語話者の先輩”を1人つける(通訳役+相談役)
  • 翻訳アプリの導入(Google翻訳より精度の高い有料版も検討)

✅ 「通じない」不安がなくなると、一気に安心感が生まれます。

3️⃣ 技術者としてのキャリアパス提示

  • 例:「3年で2級施工管理技士の取得サポート」「現場主任として昇進」
  • 月1回のキャリア面談で“将来像”を一緒に描く

✅ ポイントは、「この会社で長く働いても大丈夫」と思わせること。

4️⃣ 社内研修と“お互い様”文化の醸成

  • 日本人社員にも外国人理解研修(例:「やさしい日本語」)
  • 雑談のネタになる「お国紹介会」「昼食交流会」なども有効

✅ 多文化共生の入り口は、「お互いを知ること」から。

5️⃣ 行政書士と支援機関の活用

  • 入管とのやりとり、在留資格更新は“継続支援”が必要
  • 登録支援機関と連携し、生活支援の一部をアウトソースすることも可能

経営者が全てを抱え込まない仕組みを整えるのがコツ。

採用してからが“信頼構築”の本番

外国人技術者の定着は、日本人以上に“環境整備と対話”が物を言います。
書類上では“施工管理”でも、実態が「孤独な現場作業員」では、どんな優秀な人でも定着はしません。

少しの気配りと、仕組みの導入で
👉「会社の戦力になる存在」へと育てることが可能です。

行政書士としては、ビザ更新や報酬計画、研修体制の整備支援も行っていますので、現場での困りごとはぜひご相談ください。

外国人技術者の採用・定着を成功させるには?

~建設業の未来を守るため、今すぐ始めるべきこと~

「うちもやってみたいけど、何から始めればいいか分からない」

これは、市川市内の工務店社長さんの言葉です。
外国人技術者の活用に興味はある。でも――

  • 制度が複雑そう
  • 対応できる社員がいない
  • ビザとか入管とか、正直よく分からない

こうした不安から、「やってみたい」気持ちはあっても踏み出せない会社がまだまだ多いのが実情です。

✅ 結論

外国人技術者の活用は、戦略と支援を組み合わせれば中小建設業でも十分に可能です。
最初の一歩は、“採用ありき”ではなく「社内の棚卸し」と「外部パートナー選び」から始まります。

🧭 まずやるべきは“現状整理”

いきなり外国人を雇う前に、まず社内を見直しましょう。

チェック項目Yes/No
施工管理や設計補助など、“担い手不足”の業務があるか?✅ / ❌
技能実習生ではカバーしきれない中核的な役割があるか?✅ / ❌
社内に「外国人と接したことがある」社員が1人でもいるか?✅ / ❌
社員に対して外国人採用について説明できているか?✅ / ❌
受け入れに関して相談できる専門家が近くにいるか?✅ / ❌

このように、“採用の前に考えるべきこと”を明確にすることが、後悔しない採用の第一歩です。

📝 今すぐできる3つのアクション

① 採用意向の社内共有(小規模でもOK)

「こんな人材を採用したい」「ここが足りてない」といった話を、経営層だけでなく現場リーダーとも共有しましょう。

✅ 「みんなで迎える」姿勢を整えることが定着への近道です。

② 行政書士など専門家との初回相談

「ビザ?技能実習?どっちがいいの?」という段階でもOK。
まずは制度の違い・対象人材・手続きの流れを整理するところから一緒に始めましょう。

✅ 一歩踏み出せば、道筋が一気にクリアになります。

③ 受け入れマニュアル・生活支援の体制づくり

「住宅」「生活支援」「言語サポート」など、最低限必要な項目を紙1枚でいいので整理しておきましょう。
国交省の新ハンドブックにも便利なチェックリストが掲載予定です(※4月公開予定)。

✅ あとで慌てないために、“最初の設計図”をつくるイメージです。

今こそ、未来の現場をつくるとき

外国人技術者の採用・定着は、「すぐ儲かる話」ではありません。
ですが、それは会社の未来を支える「人への投資」です。

日本人だけでは立ち行かなくなってきた現場を、多様な人材で支えることが当たり前になる未来に向けて、今こそ準備を始めるべきタイミングです。