建設業における熱中症リスクと最新対策 – 2024年のデータから考える

建設業における熱中症リスクと最新対策 – 2024年のデータから考える

目次

建設現場で増加する熱中症リスク、ご存じですか?

「夏場の現場作業中に体調を崩した…」「熱中症対策はしているけど、本当に十分?」
建設業に従事する皆さん、年々、熱中症のリスクが高まっていることをご存じでしょうか?

厚生労働省の発表によれば、2023年に職場で発生した熱中症による死傷者数は1,106人で、前年から279人(34%)増加しました。​特に建設業では、死傷者数が12人と最も多く、全体の約4割が建設業と製造業で発生しています。

さらに、2024年5月から9月にかけての熱中症による救急搬送者数は、全国で97,578人と過去最高を記録し、前年同期比で6,111人(6.7%)増加しました。

このような状況を受け、厚生労働省は「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施し、職場での熱中症予防対策の徹底を呼びかけています。

この記事では、建設業の現場で必要な熱中症対策と、最新の法改正のポイントを行政書士の視点で解説します。
「対策が不十分かも?」と感じた方は、ぜひ最後までご覧ください。

建設業の熱中症事故が増加 – 実例から学ぶリスクと対策

建設業の現場で増える熱中症事故、その実態とは?

「夏場の現場作業中に体調を崩した…」「熱中症対策はしているけど、本当に十分?」

建設業の現場では、毎年のように熱中症による事故が発生しています。
厚生労働省の速報値によると、2024年の建設業における熱中症による死傷者数は216件(前年比3.3%増)
これは2018年以降で最多の件数となっており、特に高温多湿の環境下での作業が影響しています。

では、実際にどのような事例が発生しているのでしょうか?

【事例①】猛暑日の舗装工事現場での熱中症発症

📍 状況

  • 2024年7月、千葉県の道路舗装工事現場で発生
  • 気温35℃、湿度60%の中、朝8時から作業開始
  • 昼前に40代の作業員が頭痛を訴え、その後意識を失い病院へ搬送

⚠️ 主な問題点

体温調整ができていなかった(長袖・ヘルメット・安全ベストで体内に熱がこもりやすい)
水分補給はしていたが、塩分補給が不十分だった
軽度の異変があった段階で、すぐに作業を中止しなかった

作業服の通気性を考慮し、こまめな塩分補給が必要だったケース

【事例②】熱帯夜明けの早朝作業でも熱中症に…

📍 状況

  • 2024年8月、東京都の高層ビル建設現場
  • 午前6時から作業開始(前夜の熱帯夜で気温が下がらず)
  • 開始1時間後、30代の作業員が突然めまいを訴え、その場で倒れる

⚠️ 主な問題点

「朝だから大丈夫」と思い込み、事前対策が不十分だった
前夜の睡眠不足・疲労が蓄積し、熱中症リスクが高まっていた
湿度が高い環境で発汗がうまく機能せず、体温が上昇してしまった

早朝でも油断せず、休憩と水分補給のルールを厳格化すべきケース

この問題を放置するとどうなるのか?

「今まで大丈夫だったから」「自分は体力があるから」といった考えは非常に危険です。
実際、建設業界では「無理をする」「我慢する」文化が残っているため、初期症状を見逃すケースが多いのが現状です。

さらに、2024年4月に改正気候変動適応法が施行され、熱中症対策の強化が図られています​。
また、厚生労働省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」では、職場での熱中症対策の徹底が推奨されており、労働安全対策の重要性が増しています​。

このまま対策を怠ると、企業としての責任が問われるだけでなく、最悪の場合、労災認定や損害賠償リスクにもつながる可能性があります。

次回は、行政書士の視点から見た、建設業における具体的な熱中症対策と法的な対応策について解説します。

建設業の熱中症対策 – 企業の法的責任と適切な対応策

建設業の熱中症対策、法的にはどうなっている?

「熱中症対策って法律で義務付けられているの?」
「具体的にどんな対策をすればいいの?」

建設業における熱中症対策は、労働安全衛生法に基づく一般的な安全配慮義務の一環として求められています。
ただし、熱中症に関する明確な法律や罰則規定が存在するわけではなく、厚生労働省のガイドラインに基づいて企業が自主的に対策を実施することが求められているのが実態です。

✅ 1. 労働安全衛生法における「安全配慮義務」

労働安全衛生法(安衛法)第22条では、

「事業者は、労働者がその業務に従事するに際し、安全と健康を確保するために必要な措置を講じなければならない。」

と定められています。

この条文は、熱中症対策に限らず、すべての労働環境において事業者が労働者の安全を確保する責任を負うことを意味します。
つまり、熱中症対策も含めて、労働環境を適切に管理する義務があるということです。

⚠️ 法的ポイント

  • 熱中症対策に関する明確な法律は存在しないが、労働安全衛生法の「安全配慮義務」に基づき、適切な対策を怠ると企業側の責任が問われる
  • 労働基準監督署の指導や、労災認定の対象になる可能性があるため、実務上は法的義務と同様の対応が求められる

✅ 2. 企業が従うべき「職場における熱中症予防基本対策要綱」

熱中症対策の具体的な内容については、厚生労働省が「職場における熱中症予防基本対策要綱」を公表し、企業に対策を推奨しています。

このガイドラインでは、企業が取るべき対策として、以下の8つの項目を推奨しています。

📌 厚労省が推奨する建設業の熱中症対策(8つの基本対策)

1️⃣ 作業環境の管理(WBGT値の測定と低減対策)
2️⃣ 休憩場所の整備(ミストシャワー・日陰の確保など)
3️⃣ 作業時間の管理(休憩時間の確保、連続作業時間の短縮)
4️⃣ 水分・塩分の摂取(スポーツドリンクの備蓄など)
5️⃣ 適切な服装の選択(冷却ベスト、遮熱ヘルメットなど)
6️⃣ 健康管理(健康診断結果に基づく対応、日常の健康状態の確認)
7️⃣ 労働衛生教育の実施(熱中症の危険性と予防策を周知)
8️⃣ 緊急時の対応体制の整備(救急対応マニュアルの作成)

➡ これらの対策を実施しないと、労働基準監督署からの行政指導を受ける可能性があります。

✅ 3. 労働災害としての認定リスク

建設現場で熱中症が発生し、それが業務に起因するものであると判断された場合、労災認定される可能性があります。
労災認定されると、企業側には安全配慮義務違反が問われる可能性があります。

例えば、

  • 適切な休憩を取らせていなかった
  • 水分補給のルールを定めていなかった
  • WBGT(暑さ指数)の測定や対策を行っていなかった

こうした場合、労働基準監督署から是正勧告や罰則が科される可能性があります。

📌 労災認定事例

例えば、2023年に発生した建設現場での熱中症労災では、
✔ WBGT値が30℃を超えていたのに休憩時間を十分に確保していなかったため、企業側に労災責任が認められた事例があります。

➡ 企業側が事前に適切な対策を講じていなかった場合、行政指導や場合によっては損害賠償請求のリスクも!

✅ 4. 行政書士が提案する、建設業における実践的な熱中症対策

📌 ① WBGT(暑さ指数)の計測を義務化する

建設業では、気温だけでなく湿度や日射量を考慮した「WBGT指数」を基準に、作業環境を評価することが重要です。
✔ WBGT値が28以上の場合は熱中症リスクが高いため、作業の見直しを検討する。
厚労省推奨のWBGT計測器を現場に設置し、定期的に測定することが求められる。

📌 ② 熱中症対策を「マニュアル化」し、周知徹底する

✔ 「1時間に1回の水分・塩分補給」をルール化する。
✔ 「休憩は30分ごとに5分以上、WBGTが高い日は10分以上」を推奨。
ヘルメットや作業服の通気性を確保し、クールベストなどを導入する

➡ これらの内容を「熱中症対策マニュアル」として整備し、労働基準監督署からの指導に対応できるようにしておく。

法律を守りながら、現場の安全を確保するために

  • 熱中症対策は、法律では明確に義務付けられていないが、安全配慮義務の一環として求められる。
  • 労働基準監督署の指導や労災認定のリスクを避けるために、厚労省のガイドラインを遵守することが重要。
  • 行政書士の視点から、企業の法的リスクを回避するための具体的なマニュアル作成を推奨。

次回は、実際に企業が導入すべき「具体的な熱中症対策の実践例」を紹介します!

建設業の熱中症対策 – すぐに実践できる8つのポイント

現場で「今すぐできる」熱中症対策とは?

これまで、建設業における熱中症の危険性や、法律上の義務について解説してきました。
しかし、具体的に「何をすればいいのか?」が分からなければ、実際の対策にはつながりません。

そこで今回は、現場で即実践できる「建設業向けの具体的な熱中症対策8つ」を紹介します。

✅ 1. WBGT(暑さ指数)の計測を習慣化する

「気温30℃だから大丈夫」ではなく、WBGT(湿度・輻射熱も考慮した暑さ指数)で判断することが重要です。

📌 実践ポイント

✔ WBGT値が28℃を超えたら作業計画を見直す
✔ 測定器を現場に設置し、リアルタイムで値を確認
✔ 施工管理者が1時間ごとに記録し、熱中症リスクを周知

✅ 2. 休憩時間を確実に確保する(30分ごとが理想)

「短時間で済ませよう」と無理をすると、知らない間に熱中症が進行する危険性があります。

📌 実践ポイント

✔ WBGT値28~30なら「1時間ごとに10分休憩」
✔ 30以上なら「30分ごとに5~10分休憩」
✔ 日陰やエアコンの効いた休憩所を用意する

➡ 無理に作業を続けるより、こまめな休憩を取る方が生産性は向上します!

✅ 3. 水分・塩分補給を「ルール化」する

「喉が渇いたら飲む」は危険! 作業ごとに水分補給をルール化するのが重要です。

📌 実践ポイント

20分ごとに1回、水分補給を義務付ける
✔ スポーツドリンク or 経口補水液を用意(冷水は逆効果のことも)
✔ 汗を大量にかく現場では、塩飴やタブレットを配布

➡ ルール化しないと、「休憩時だけ飲む」→「脱水症状」のパターンに!

✅ 4. 「涼しい服装」と「冷却グッズ」を標準装備

建設業では、安全のために長袖・ヘルメットが必須。
しかし、これが熱を逃がさず、熱中症のリスクを高める要因になっています。

📌 実践ポイント

空調服(ファン付き作業着)を導入
ヘルメット用の冷却タオル・アイスパックを支給
冷感インナー(吸湿速乾素材)を着用する

➡ 作業服の見直しで、体温上昇を抑えられます!

✅ 5. 「朝礼」で熱中症リスクを毎日伝える

どんなに対策を整えても、「作業員が気をつけなければ意味がない」。
朝礼時に毎日、熱中症の危険性を共有し、意識を高めることが大切です。

📌 実践ポイント

✔ 「今日はWBGTが○℃なので、○分ごとに休憩しましょう」と具体的に伝える
✔ 作業員同士で「熱中症の初期症状チェック」を実施
✔ 体調が悪い人は「絶対に無理をしない」ように促す

➡ 「暑いけど、あと少しだけ…」が重大事故につながる!

✅ 6. 作業スケジュールを「気温ベース」で組む

「午前は涼しいから大丈夫」は間違い。
前日の熱帯夜や、湿度の上昇も考慮して作業スケジュールを調整しましょう。

📌 実践ポイント

最も暑い時間(13時~15時)を避けた工程を組む
屋外作業は、午前と夕方に集中させる
日陰でできる作業を優先する

➡ 「とりあえず朝から始めよう」ではなく、環境を考えたスケジュール管理を!

✅ 7. 「万が一の対策」を事前に決めておく

もし作業員が熱中症になったら?
その場での対応が遅れると、命に関わる可能性があります。

📌 実践ポイント

現場に「熱中症対策責任者」を配置する
緊急時の連絡手順(救急車要請・応急処置の流れ)を明確にする
作業員全員に「熱中症の応急処置マニュアル」を配布する

➡ 事前に決めておけば、いざというときに迅速に対応できる!

✅ 8. 行政書士の視点から「安全衛生管理計画」に反映させる

建設業では、「安全衛生管理計画」の作成が求められます。
この中に、熱中症対策を明文化し、対外的なアピールに活用するのも有効です。

📌 実践ポイント

WBGT測定・休憩ルールを計画書に記載する
熱中症対策の実施状況を「安全衛生委員会」で定期確認
建設業許可申請・経営事項審査時の「安全対策PR」として活用

➡ 行政手続きにも役立つ「戦略的な熱中症対策」を!

まとめ – 明日から実践できる熱中症対策!

🔥 WBGT(暑さ指数)を毎日測定する
🔥 休憩時間をこまめに確保する
🔥 水分補給をルール化する
🔥 涼しい作業服や冷却グッズを活用する
🔥 朝礼で熱中症対策を徹底する
🔥 スケジュールを気温ベースで管理する
🔥 緊急時の対応を事前に決める
🔥 行政手続きにも活かす

➡ これらを徹底することで、「熱中症ゼロの現場」を実現できます!

建設業の熱中症対策 – 企業が取るべき行動とメリット

1. この記事で学んだこと – 熱中症対策の重要ポイント

これまでの内容を振り返ると、建設業における熱中症対策は「現場の安全確保」と「企業の責任回避」の両面で極めて重要であることがわかります。

🔹 熱中症は年々増加しており、2024年には過去最多の死傷者数を記録
🔹 労働安全衛生法には「熱中症対策」の明確な規定はないが、安全配慮義務の一環として対策が求められる
🔹 厚労省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」を実践することが重要
🔹 労災認定や行政指導のリスクを回避するため、企業側の自主的な対策が必須
🔹 現場で実践すべき具体的な対策(WBGT測定、休憩時間の確保、水分補給のルール化、冷却グッズ導入など)

2. 熱中症対策を実施することで得られるメリット

✅ 企業の信頼向上(取引先・元請からの評価アップ)

元請企業や発注者は、「安全管理が徹底された企業」と取引をしたいと考えています。
そのため、熱中症対策を徹底していることをアピールすることで、受注のチャンスが増える可能性があります。

📌 例えば…
経営事項審査(経審)での評価アップにつながる(労働安全衛生対策の実施状況が考慮される)
取引先・元請企業からの信頼が向上し、新規案件の獲得につながる
自治体や公共工事の入札で「安全対策を重視する企業」として評価される

✅ 労働災害を未然に防ぎ、企業リスクを低減

熱中症で労働災害が発生すると、企業側は法的責任や賠償責任を負うリスクがあります。
また、行政指導が入ると、企業の評判にも悪影響を及ぼします。

📌 熱中症対策を実施することで、以下のリスクを回避できます。
労災認定を防ぎ、企業の信用低下を防ぐ
行政指導(是正勧告)を受けるリスクを減らす
社員の健康を守り、長期的な人材確保につなげる

✅ 作業効率の向上と離職率の低下

「暑さで集中できない」「体調が悪くなる」といった問題が減れば、作業効率は向上し、ミスや事故も減少します。
また、熱中症対策がしっかりしている企業は、従業員の満足度が高まり、離職率の低下にもつながります。

📌 例えば…
休憩時間を適切に確保することで、集中力が維持される
体調不良による欠勤が減り、人手不足のリスクを軽減できる
「働きやすい職場」として評判が高まり、優秀な人材の確保につながる

3. 企業が今すぐ取り組むべき3つのアクション

🔹 1. 熱中症対策の「ルール化」と「マニュアル化」

WBGT(暑さ指数)を基準に、休憩時間・作業時間を明確にルール化する
水分・塩分補給、服装の指導を徹底する
作業員全員が理解できる「熱中症予防マニュアル」を作成し、朝礼で共有する

➡ 「うちの会社は熱中症対策を徹底しています」と明確に示せるように!

🔹 2. 建設業許可や経営事項審査で「安全対策」の評価を活用する

経審や建設業許可の申請時に、熱中症対策を明記し、企業の安全管理能力をアピールする
元請企業との打ち合わせで、具体的な対策を説明し、信頼性を高める
公共工事の入札時に「安全対策に力を入れている企業」としてアピールする

➡ 熱中症対策を「コスト」ではなく「投資」として考える!

🔹 3. 行政書士に相談し、リスク管理を強化する

労働安全衛生法や行政指導に対応できる体制を整える
安全対策に関する書類(安全衛生管理計画など)を専門家と一緒に作成する
行政からの指導が入った場合の対応策を事前に考えておく

➡ 「法律面のリスク管理」まで考えた熱中症対策を実施!

4. まとめ – 熱中症対策は「企業の未来を守る投資」

熱中症対策は、労働者の命を守るだけでなく、企業の信頼と経営リスク管理にもつながる。
元請企業・自治体・取引先からの評価が上がり、新たな受注チャンスを生む可能性がある。
適切な対策を講じることで、労働災害のリスクを低減し、企業の信用を守ることができる。
作業効率の向上や離職率の低下にもつながり、長期的な利益を生む。

🔥 「今まで大丈夫だったから…」は通用しない!
🔥 「企業の価値を高めるための熱中症対策」を、今日から実践しよう!

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